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カテゴリ:代表雑感( 3 )

2020年に入り、新型コロナウイルスの蔓延がアジアのみならず、世界に広がり、社会に不安が広がっています。

タッチケアの実践について壁となりやすいことは、「ハラスメント(いじめや嫌がらせ)の誤解」と「感染症」。前者は、主にコミュニケーションの問題となり、特に異性間ではセクハラととらわれやすい問題が常につきまとうので、丁寧なコミュニケーションが必要です。このことについてはまたの機会に。今日は、主に「感染症」という壁についてお話したいと思います。


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パンデミック等の感染症パニックをテーマにした映画等で、よく、愛し合う二人の一方が伝染病に感染してしまい、隔離され、触れあえなくなり、涙する・・・というシーンは、よく見かけるかと思います。ほんと、感染病は、人と人とのつながりと触れ合いを分断する、とても、厄介な地球上の現象です。しかし、人類は、思いおこせば、何度も何度も、こうした大規模な感染症を乗り越えてきました。そして、その中で、一度も、触れあうことを手放すことはなかったのです。なぜなら、触れあわないことは、すなわち、人類の生存や心身の健康までも妨害してしまうからなのです。


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ところで、こころにやさしいタッチケアでは、「気づき(awareness)」と共に触れることを、大切にしています。気づきとともに触れることで、受け手を尊重し、安心感と信頼感と共に、こころにも、からだにも、やさしく触れることができるからです。感染症に対して、適切な対処をすることは、「安心・安全」の基盤となる、大切な「気づき」のひとつです。



とくに、病院や、高齢者施設でのタッチケアでは、どのようなときでも、施術者が保有するウイルスや菌が、施術者にとっては特に支障がなくても、免疫力の下がった受け手の方にとっては、問題が生じることがあるので、基本的にこちらがもつ菌やウイルスを、相手に感染させないための準備をして施術します。感染経路を科学的に理解した上で、手洗い・マスク・あるいは、必要に応じて医療用グローブを使用します。


今回の新型コロナウイルスは、感染力が強く、まだ特効薬が発見されていないこと。そして、抵抗力のない方は肺炎等で重症化しやすいなど、これまで以上に警戒が必要です。施術者は、自分自身に感染があるかどうかをなるべく検査によって判断し、その際は、もちろん人との接触はやめる。あるいは、体調に不安があれば、避ける等の配慮が必要です。また、健康な状態であっても、自分自身がキャリアであることもあります。十分に気を付けて関わることが必要です。とはいえ、これは、今回のコロナウイルスだけではなく、医療環境下でのタッチケアの場合は、おおむね、同じことだとも言えるのではないでしょうか?


次に、どのような気づきが大切かを、整理していきたいと思います。




「感染ルート」に気づきをもつ。



一般に、病原体への感染経路として想定されるのは「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」「媒介物感染」「血液感染」・・・等ですが、今回の新型コロナウイルスを想定しながら、区別して考えてみましょう。

まず、もっとも気になるのは「接触感染」。この意味は、「ウイルスに触れた手で、口や鼻を触ることにおこる感染」で、ウイルスの含まれた飛沫や血液や排出物等に触れた手で、口や鼻、目等に入り、感染するという経路です。あるいは、皮膚上の疥癬(ダニ)や水虫(カビ)等に接触することで、感染することもあります。



ここで大切なことは、もちろん、「手を清潔にすること」ですね。手洗いを、非常に念入りに行う必要がありますし、洗ったあとの手で、再び不用意にそのあたりを触れないことが大切です。手に触れるもの、たとえば、オイルの入ったボトルや、タオル等も清潔にしましょう。汚染された手で、そうしたものに触れないことも大切です。状況に応じて、手袋(医療用のグローブ)を使う必要があります(グローブを外す時は、外側に触れないようにします)。



接触感染という言葉を聞くと、「触れると感染する」というイメージがありますが、そうではなくて、「手」がウイルスを媒介しやすいという意味です。だから、握手をしたから、うつるのではなく、その手を、口や目や鼻にふれて、ウイルスが体内に入る前に、しっかりと洗えば問題はなく、電車のつり革だろうと、握手で触れる人の手であろうと、原理は同じです。なので、タッチケアの施術者は、手を清潔に保つということに、特に注意を払わないといけません。触れたあとも、清潔に手を洗います。そして、今、自分が、どこにどのように触れているのか?について、気づきをもつことが大切です(後述)



正しい手洗い法については、動画をあらためてご参照ください。

https://www.youtube.com/watch?v=F1b5pInPkP0


今回の新型コロナウイルスでは「飛沫感染」が確認されています。なので、マスクは自分の飛沫を相手に飛ばさないためには、一定の効果があると言えるでしょう。相手との距離が近づいてしまう施術の際に、マスクは必須です。新型コロナウイルスは、エアロゾル感染もうわさされていますので、この場合は、飛沫よりも粒子が細かく、空気感染に近いのでさらに警戒は必要ですので、マスク使用中でも、必要以上のおしゃべりは避けたほうが良いでしょう。また、マスクの外側に不用意に触れることも避けましょう。



やはり、大規模なイベントだと、ウイルスに感染している人が参加している確率がぐんと高くなるので、中止等の措置がされるのも理解できます。一緒に食事をすることも、大勢の場合は、注意が必要でしょう。ここで、必要となるのは、「距離」や「空気感」への気づきです。それも後述します。その他、経口感染や唾液感染、排泄物を介しての感染経路もありますが、ここでは省略します。



「血液感染」。これは、今回のウイルス騒動とは無関係のようですが、少し言及させていただきます。主に輸血や、大量の血液・体液の交流によって起きる感染です。B型・C型肝炎や、HIVが有名です。採血や注射等、血液に直接触れる医療者の方は警戒が必要ですが、日常生活でのかかわりでは、まったく問題がありません(ちなみに、私の亡くなった父は、C型肝炎のキャリアでした) HIVウイルス感染者の方は、80年代に発見された頃はまだ特効薬が開発されてなく、非常に恐れられ、そして、差別や偏見の対象にもなりましたが、現在は薬を飲めば発症することもなく日常生活を支障なく送ることができます。私は、HIVのキャリアの方にも全身のオイルトリートメントを行うことがありますが、まったく問題がありません。むしろ、社会的な偏見のため精神的に苦しい思いをされているので、皮膚へのやさしい接触は、不安や孤独感を癒し、免疫力も高めるので、積極的に受けられたほうが良いというのが私の個人的な意見です。重ねて言いますが、「触れることで感染する」ということは全くないのです。想像してください。自分が「触れられてはいけない存在である」と思うことがどれほどその方の心を苦しめるかを。かつて、こうした誤解で、国によって隔離を強制されたハンセン氏病の方への問題も同様の誤解から生じています。このように、感染症については、感染経路を明確に理解して接しなければ、人々の心を傷付け、差別や偏見等の人権を迫害する問題になりやすいので、冷静にかかわることが大切です。



(感染症とは異なりますが、触れることで、施術者が影響を受けるという問題で留意すべきことは、オンコロジー・マッサージセラピーで毎回、学ぶことなのですが、抗がん剤等、非常にきつい薬物の投与中、皮膚から抗がん剤が滲み出て(暴露)、その肌に直接触れることで抗がん剤の影響を、施術者が受けてしまうことが、稀にあるということも知っておくと良いでしょう。言うまでもなく、これは、ウイルス等の感染ではありません。一時的な影響です。毎日触れるような病院勤務でのマッサージセラピストで無ければ、それほど大きな影響を受けることはありませんが、米国オンコロジーマッサージセラピーでのガイドラインでは、抗がん剤治療を投与した後の、72時間以内(3日以内)は、施術者は皮膚に直接触れるオイルトリートメント等の場合は、念のために医療用グローブを付けて施術をすることが推奨されています。上質で密着感のあるグローブは、受けている人にとっても違和感があまりなく、すべすべ感がむしろ気持ちよく感じられます。医療環境下では、グローブを使っての施術も、お互いの安全性を高めることを、クライアントさんに理解していただきながら、使用することの抵抗感をなくしていくことも、大切でしょう)



 「距離」や「角度」「空間」に気づきをもつ。



タッチケアの講座というと、ハグをしたり、べたべたと触れ合うようなイメージをもたれるかもしれませんが、うちの講座に一度でも参加された方なら、そうではないことをご存じかと思います。“こころにやさしい”タッチケアですから、受け手の方にとって、安心安全な距離や、角度、スピードを丁寧に調整する必要があります。そして、それはお一人お一人の感性によって異なります。



また、講座には、稀に触れられるのが苦手な方もご参加されることがあります。なので、うちの講座では、まずは、自分自身に触れることを大切にします。自分への気づき、自分自身の中心をしっかり感じてから、人との距離を大切にします。自分の中心が感じられないと、人との距離を測ることができないのです。講座では、人と人との間にふれることも体験します。ゆっくりと距離を縮めていきながら、その瞬間瞬間で、どのように心が変化するかを体感します。私達は、空気を通じて、つながっているのを感じましょう。もちろん、マスクを着用し、かつ、角度等をうまく使い、直接飛沫が届かないポジション等も工夫すると良いでしょう。




また、お部屋の換気をし、空気そのものを循環させ、清潔に保つことも大切です。手を清潔にし、マスクもつけて、部屋の換気もおこない、気づきをもって、距離や角度を調整すれば、無意識に語らい、飛沫を飛ばしながら、大勢で一緒に、わいわいと楽しく食事をする宴会などよりも、感染の危険性が下がるのは、想像していただけるかと思います(飲食業の方、申し訳ございません。はやく、事態が収拾することを願ってやみません)



 何にどのように触れているのか、気づきをもつ。



①で も説明しましたが、手を洗うことは、本当に重要なことですが、さて、問題は、そのあとです。せっかく、清潔にしたにもかかわらず、再び、どこかに不用意に触れてしまう。たとえば、スマホ。たとえば、自分の髪の毛等。洗った手も、あっというまに汚染されます。



最近、電車に乗ると、ほとんどの方はマスクを着けておられますが、よく見ると、マスクをつけながら、無意識に自分の手で額やほほや鼻等に触れている方をよく見かけます。顔に触れると、手が媒介となりそこから目や鼻にウイルスが入る可能性が高まります。いわゆる、これが「接触感染」なのです。人は、ほんとうに無意識に、すなわち、気づきなく、どこかに触れてしまうものなのです。家の中等、日常生活ならば仕方がないでしょう。神経質になりすぎて、疲弊してしまうよりはおおらかであるほうが良いのかもしれません



しかし、タッチケアの施術者であるならば、そうした“無意識に触れる”ことを諫めて、今、どこを、どのように触れているのかに“気づき”を持つ必要があるのです。その手は、癒しを届けると同時に、ウイルスも媒介するのだという自覚を持ちましょう。手を清潔に保つことも。自分自身の「手」に対しての責任の一部です。


また、持ち物や衣類等も、外部のウイルスを内部に持ち込むことがあります。触れる面をアルコール除菌をしたり、何か、カバーをしたり、注意が必要です。



そして、気づきを持つために必要なことは、グランディングです。大地とつながり、大地にささえられることで、心を穏やかにし、ゆっくりと、“今ここ”の気づきをもって、触れていくこと。こわごわと、心配しながら触れるぐらいなら、タッチケアの施術はお休みしたほうが良いでしょう。こちらの心配な気持ちは、相手に伝わり、“不安”こそが、感染していく主体となってしまいます。この、不安や怖れは、ウイルス以上に感染力が強く、人を傷つけ、厄介なものなのです。そこで、大切なのが、グランディングと気づき。ここで、ふたたび原点に戻りましょう。




 今・ここの気づき。グランディングの大切さ。



こころにやさしいタッチケアは、施術者が、自分自身をリラックスさせ、グランディングすることがもっとも大切な基本なのですが、何故、それが必要なのか?あらためて原点に戻ってみましょう。



それは、施術者の“気づき”を深め、広げるために必要なのです。グランディングすることで、自分自身が大地にしっかりささえられていて、不要な力をぬくことができます。集中せねばと頑張りすぎると、おうおうにして、前かがみになって、姿勢が悪くなり、そして、見える範囲が狭まります。すなわち、気づきが狭まります。思い込みが激しくなり、正しい判断を行うことができなくなります。気づきとは、一点に集中するのではなく、全体性(触れる箇所・受け手の方全身・空間全体・その施設全体・・・)を、ホリスティックに俯瞰することです。その上で、感染ルートの科学的に理解する思考力が活きてきます。気づきとは、思考する力の土壌でもあるのです。



過剰に心配しすぎ、心配な気持ちで相手の方に触れていては、相手の方も、不安になりますよね。それは、ウイルスを感染させるのと同じように、問題があるのです。不安がある場合は、いさぎよくお休みください。休むことは、とても大切なことで、そして、自分自身のセルフケアに集中しましょう。



その上で、落ち着いて、グランディングをし、受け手の方に、心地よさと安心感、そして、人とのつながりを感じてもらう。すべては、グランディングとマインドフルネスが勝負なのです。自分自身が寛ぐこと。足の裏を感じ、大地に支えられていることを大切にし、息を止めず(だから、マスクは大切)、“今・ここ”を大切にしながら、ゆっくりとかかわる。全体性をみわたし、改善すべきこと、避けるべきこと、対処すべきことを行いながら、相手に、安心・安全と。心地よさを伝えていくこと。すごく難しいようですが、そのぶん、施術内容はシンプルなほうが良いでしょう。まさに、doing よりも、being ですね。



今回の新型コロナウイルスの問題では、このように、気づきをもって触れること、マインドフルネスにふれることの意味が、一層に深まり、私達の「こころにやさしいタッチケア」も、感染予防の知識を深めると同時に、グランディングとセンタリング、そして、マインドフルネスの大切さを、1オクターブ高めることを、研鑚していきたいと思います。





そして、、、。再び、振り返っていただきたいのです。

ふれあいのない、交流のない世界の味気無さを。



今は、感染が拡大しないための非常事態なので、仕方がないでしょう。

いずれ、特効薬が開発され、抗体を持つ人も増えるので、この嵐が過ぎ去るのをじっと待つ時期でもあります。

しかし、この問題が終えたあとにも、「触れてはいけない」「人と交流してはよくない」という風潮が残ると、それこそが、人類の心身の健康のための大きな危機だと言えるでしょう。



私達のからだは、やさしく触れられ、人とつながることで、不安や心配、ストレスや痛みを癒し、自分自身のからだを感じ、そして、孤独を癒します。触れられることの心地よさと、安心感は、リラクセーション反応を深め、自律神経系のバランスを高め、相乗的に、内分泌系・免疫系を高めます。ウイルスや病に打ち勝つ私達の身体本来の力を高めるのです。



なので、可能な限り、気づきを深め、そして、触れあうことを、大切にしていくことを、続けていきたいと思います。手を清潔にして、危険のない限りは、触れあうことを、続けていきましょう。傷ついた人ほど、触れられて、安心し、つながることが必要であることを、覚えていてほしいと思います。危険を回避するために知識を多くもつことは大切ですが、必要以上の情報に踊らされて不安や怖れに呑み込まれず、頭の中を整理整頓していきましょう。



そして、思い出してほしいのです。

すべてが、つながりあっていることが、この世界の本質です。

つながりを、おそれず、つながることの癒しを、引き続き伝えていきましょう。

今は、実際に、触れあうことは難しいかもしれませんが、声をかけたり、心でつながったり、目に見えない心の手で、触れあっていきましょう。



ウイルスの嵐が、春の訪れとともに過ぎ去りますように。



感染された方が、少しでも軽症で、回復されていかれますように。

感染を抑えるための隔離が、私達の心の分断を生み出しませんように。

今回の問題で、経済的ダメージを受けた方達に適切なサポートがありますように。

子どもたちが学校に行けなくて、仕事に行けなくなったお母さん達に適切なサポートがありますように。

最前線で働かれる医療者の方達のご負担が少しでも少なくなりますように。



祈りとともに。





2020年 3月1日

NPO法人タッチケア支援センター

~やさしくふれると世界は変わる~

代表理事 中川れい子

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”気づき”と共に触れることの意味 / 新型ウイルス問題に際して _b0228973_14024470.jpg





by touchcaresupport | 2020-03-01 14:55 | 代表雑感

10月6日(土)&7日(日)

上智大学にて、第五回 ソマティック心理学協会


大会テーマは

『「ケア」と「ソーマ」〜心と体からの癒しを探る〜』。

赤ちゃんのケアからグリーフケア、死生学、スピリチュアルケア、ケアする人のケア、未来の統合的な医療の姿など、様々なケアと心身の在り方を探求していきます。恒例のソマティックワークのワークショップや多くの分科会から構成される、例年以上に豪華な構成となっています。素晴らしい先生方で満載の素晴らしい企画です。

詳細は、こちらをご覧ください。

http://somaticjapan.org/5th-conference2018


2日目の7日の午前中の分科会で、タッチ研究の第一人者、山口創先生(桜美林大学教授)とご一緒に、「ソーマに触れていくー心・からだ・魂に触れる癒しー」を開催します。貴重な機会をいただき、感謝で心がいっぱいです。


今回は、タッチやタッチケアの様々な視点の中で、特にソマティクス(SOMATICS)としての、触れるワークが、身体感覚への気づきを促す効果に注目していきたいと思います。特に、タッチケア支援センターの提唱するタッチケアでは、ソマティクスの側面を大切にしていますので、今回のフォーラムでは、さらにその面を深めていきたいと思います。


今回のフォーラムに先立ち、日本ソマティク心理学協会の、ニュースレターに、寄稿させていただきました。

ご笑覧ください。


NPO法人タッチケア支援センター

代表理事 中川れい子


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SOMA”に触れていく―タッチを“CARE”へと育むためにー


2011年の5月、「やさしくふれると世界は変わる」をテーマに、関西でNPO法人タッチケア支援センターを設立してから、はや7年。それは、エサレン®ボディワーカーとして個人セッションにあけくれ10年余りの年月が経った頃でした。東日本大震災被災地から始まった施術活動も、高齢者施設・がん患者会・うつ病の方の就労支援センター、発達障害の方のデイサービス・産後のお母さん・そして終末期の方の緩和ケア病棟等、海外の施術例にも学びながら、丁寧にかかわりの輪を広げ、確かな手触りを重ねてきました。


タッチケアとは、手をあてたり、やさしく撫でたり、あるいは、オイルを使って地肌にマッサージするなど、赤ちゃんからお年寄りまで、老若男女、家族間ケアや看護・介護等の対人援助として活用できる「触れる」ケアの総称です。現在、国の内外で様々な手技療法が紹介されていますが、特定の技法や様式には分けずに、「触れる」という行為の原点に出来る限り忠実に基づくことで、ジャンルを超えた交流を広げ、利用者の方の様々なニーズに合った“寄り添い”を提案することができると考えています。


あたたかく、やわらかな感触で安らぎと寄り添いを届ける、対人援助のためのタッチケアについては、拙論考、≪身(み)≫の医療 第二号(2016年)『対人援助に役立つタッチケア・その理論と実践―身(み)・存在・いのちに触れるケアとしてー』をご笑覧いただけますと幸いです。(http://touchcaresupport.com/ の右側からリンクできます)


そして、2018年の春、タッチ研究の第一人者、山口創先生(桜美林大学教授)を中心にジャンルを超えたボディセラピストや、タッチに関心を寄せる人々の交流により、「日本タッチ協会」が設立し、私も共同代表の一人を務めさせていただくこととなりました。“触れる”という、太古の昔から人に備わった癒しの力を、安全で効果的に伝える活動も、ここにきて多くの同じ思いの方達とつながり、社会に発信する力を増しつつあります。その中で、ソマティクス心理学協会の活動とも、様々な形で交わらわせていただけたらと思います。昨年・今年と、関西でもソマティック・フォーラムが開催され、毎年多くのことを学ばせていただいております。

さて、タッチケアの普及・教育・実践活動の中で、特に重視してきたことは、タッチケアの科学的な作用と効果(三人称の視点)を明らかにすることと、自らの身体感覚の気づきを通じて自己成長を促す“ソマティクス”を基盤(一人称の視点)とする施術者の教育でした。ここでは後者についてお話したいと思います。


SOMAとは、ギリシャ語に由来する“内側からいきいきと感じられる一人称のからだ”を意味します。その感覚は、常に「今・ここ」として体験され、瞬間・瞬間、変化しています。他者のからだをSOMAとして触れる時、その手は〝刻々と変化する、生きているからだ“として、いのちの深淵さを受け取ります。それは客観的に見るからだ(BODY)とは本質的な違いがあります。SOMAとして触れて受け取る感覚は、今ここで生きている一人称のからだであり、他者の思い込みを許さない未知の領域としての「尊厳」がそこにはあります。“あるがまま”の受容と共に届けられるタッチケアは、互いのいのちの「尊厳」を育みあい、かけがえのなさを支えあいます。


高齢者や認知症の方にタッチケアを提供する中で、海外から発信される新しいケア法とも出会ってきました。利用者の尊厳を大切にする『ユマニチュード』や、受け手の立場にたってケアを提供する『パーソン・センタード・ケア』、コミュニケーションを大切にする『バリデーション』等、どれも受け手の尊厳を守り、身体的・感覚的なかかわりを重要視します。今、二人称のからだへの視点もまた、大きく進化しつつあります。


こうした素晴らしいケアに加え、ソマティクスをベースとするタッチケアは、施術者も同じように豊かな「内的世界」を感じる主体として機能するところに特徴があります。施術者自身が、自分自身の感覚を開き、生き生きとしてそれを感じ、giver(与え手)であると同時に、receiver(受け取り手)であり続けます。ここに「触れることは、触れられること」というタッチの属性が浮かびあがります。


施術者は自身の在り方に気づきをもち、感覚を開いていくために、自らが“寛ぐ”必要があります。自分自身の心地よさと安心感・日常的なセルフケア・繊細に感じとることができる柔らかな身体と姿勢・グランディング・距離感覚、そして呼吸等が大切な鍵となるでしょう。


タッチケアでは、この“感じる”ことそのものが、他者との“共鳴・共振”、あるいは“寄り添い”を意味します。相手が安心し、寛ぎ、時には境界を解除するように人に身をゆだねる無意識レベルでの寄り添いは、皮膚の内側と外側という意識を緩め、自己存在の確かさと共に、わたし自身を超えていく原初の安心感をもたらすこともあるでしょう。


自分自身を感じ、相手を感じるというプロセスの中で、ごく自然と、動作も呼吸も、ゆっくりとなっていきます。“ゆっくりと動く”こと、そして“呼吸”は、“今・ここ”の気づきを深め(マインドフルネス)、状況や相手をより広く深く見守るケアの力を深めます。


そして、“グランディング(重力)”。特に、共に地球につながり、大地に支えられているという「重力」感は、施術者の落ち着きを促し、「触れるー触れられる」二者間の心理的な混乱を最小限のものとする力があります。タッチケアにおけるソマティクス教育では、こうした施術の基盤となるものを強めていきます。


たとえ、触れる手が、からだの部分に触れていても実は全身に触れているという意識。解剖学的な肉体だけではなく、感情・思考・記憶・夢・魂・・・エネルギーや自然・環境・関係性・社会・地球、そして宇宙にまで広がる、大いなる循環系の中でつながりあい、存在しているというホリスティックな身体観の育成も大切です。SOMA本来がこころ・からだ・魂を切り離さないホリスティックなからだであることにも注目しましょう。


互いにSOMAとして触れあうとき、いのちの尊厳・いのちの循環の意味が輝きを増し、そして、やすらぎと慈しみをもたらすやさしいタッチの質が育まれていきます。


タッチケアにおけるソマティクス教育は、触れるケアのみならず、様々な形のケアの在り方も、豊かさを深めていくでしょう。ぜひ、ご体験ください。



中川 れい子

NPO法人タッチケア支援センター 理事長 

日本タッチ協会 共同代表

エサレン®ボディワーク認定プラクティショナー


“SOMA”に触れていく―タッチを“CARE”へと育むためにー     (日本ソマティック心理学協会NL 寄稿)_b0228973_16244782.jpg






by touchcaresupport | 2018-09-28 15:40 | 代表雑感
追悼、黒田裕子さん ~神戸フォーラム2016に参加して~_b0228973_22235214.jpeg
9月24、25日は、日本ホスピス在宅研究会主催の「黒田裕子記念、神戸フォーラム2016」に参加するために、ポートアイランドへ。http://kurodakinen.okoshi-yasu.net/
大会長が、第二回関西タッチケアフォーラムでお招きした長尾クリニック院長の長尾和宏先生(私の父の在宅医療でも大変お世話になった先生です)であったことや、宮城県気仙沼の面瀬仮設住宅での活動でお世話になった災害ナースの黒田裕子さんの追悼イベントでもあったことで、今回はぜひとも参加しようと思い早々に申し込んでおりましたが、とてもいい勉強となりました。

会場には、在宅ホスピス医療にかかわる、医師、看護師、介護士の方をはじめ、セラピスト仲間も数名参加してくれていました。2年前に旅立った父の在宅介護をサポートしてくださった、長尾クリニックのケアマネさんや看護師さんともうれしい再会も(偶然、その同じ日に私以外の家族が父のお墓参りに行っていたのをあとで知り、にやりと笑ってしまいました^^) また、いつもタッチケアボランティアでお世話になっている喜楽苑の皆さまや、昨年、ニューロタッチセラピー講座の施術モデルで利用者さんとご一緒に駆けつけてくださった大阪の施設長さんとも再会。介護や看護、在宅医療やホスピス、スピリチュアルケアにかかわる、まさに「現場」にかかわる医療・福祉関係の皆さまの大集合の大会でした。

分科会、学習会、講演会も目移りするような内容でしたが、学んだことのほとんどすべてが、「こころにやさしいタッチケア」の実践と講習の在り方に直結する内容でした。

様々な分科会がありましたが、1日目に私が選んで参加したクラスの1日目は、岐阜県の円空仏で有名な千光寺のご住職、大下大圓先生の「臨床瞑想法」。3年前の東京国立博物館での「千光寺の円空仏展」を観て以来、ずっとお会いしたいと願っていた和尚様の瞑想教室。これが実にわかりやすく、よく整理されていて、「瞑想」が人々の心身の健康のサポートとして医療の現場に定着しつつある時代に突入していることを再確認。「ゆるめる瞑想」「みつめる瞑想」「たかめる瞑想」「ゆだねる瞑想」という説明は、とてもわかりやすく、瞑想の中にある「癒し」「気づき」「目覚め」の要素が、脳科学とともに解説していただきました。タッチケアの実践でも、施術者のグランディング&センタリングのため、瞑想はとても大切。ただ、やはり、参加者の方にとっては敷居が高いものに見えます。この「臨床瞑想法」ならば、もっと親しみやすくお伝えできるのではないでしょうか。15年程前、瞑想リトリートがあまりにも自分のためになるので、何度も参加していたのですが、その時の師が、Meditation is medicine と語っておられましたが、ほんとその通りだと思います。


2日目の午前中は、高齢者医療のご専門の医師の梁勝則先生による「ユマニデーション」
これは、今話題の、介護や看護のかかわり技法である、フランスの「ユマニチュード」と、アメリカの「バリデーション」の2つを混ぜ合わせた造語だそうです。
この2つを一度に学べるお得な3時間。
梁先生のクラスの運び方がとっても楽しく、体験ワークを交えて、認知症の方へのかかわりのポイントを伝えていただきました。
アイコンタクトや笑顔、非言語的コミュニケーション、位置やポジショニングの大切さ、フィードバックなど、こうしたことは、タッチケア講座でも大切にする内容ですが、こうやって、あらためてしっかり学ぶと、「こころにやさしいタッチケア講座」の指導法に一本筋が入ります!(←ぶれない自分を発見!) 新しい気づきもいっぱいいただきました。さっそく実践してみましょう。
そして、ケアの現場の方たちのプロ意識の高さからも、大いなる刺激をいただきました。

いつも思うのですが、触れることのケア法で大切なことは
1、自分自身を調えること(セルフケア 一人称の身体学)
2、人とのかかわりやアプローチ法
3、皮膚や脳神経へのかかわりなどのタッチに関するサイエンスの側面
4、実際に触れていくための癒しの技法
の4本柱。そのもっとも大切なのは①と②
その2つをこれらの講座で再確認できたように思いました。

お昼は、ランチョンセミナー。
災害ナースとして知られる黒田裕子さんの追悼。
司会は大会長の長尾和弘先生。
昨年放映されていたNHKのドキュメンタリーの映像と、黒田裕子さんをよくご存じの方のお話を伺いました。

阪神淡路大震災のときに立ち上がった災害ナースとして有名な黒田さん。
あの当時、千や2千戸と立ち並んだ、埋め立て地や山間部に建てられた巨大仮設住宅群。
ようやく避難所から一戸建てにと安心したのもつかのま、、、どこまでも無機的に夥しく並ぶ阪神間の巨大仮設住宅住居群に、どれほど多くの方が荒涼とした無力感にさいなまれたことか。。。そして、連続する孤独死と、震災関連死。。。
黒田裕子先生は、その仮設住宅を一件一件回る!ということを真摯に実践された方で、その精神を後のちの災害復興支援の在り方に伝えていった方でもあります。
それが、どれほど大変なことであるのか、、、。NPOなどの組織や助成金等の支援機構がまだない時代です。資金ぐりも本当に大変だったと思います。
阪神淡路大震災の当時、私はまだ30歳をすぎたばかりの一兵卒の現地ボランティアの一人でしたが、復興支援対策の先例のない時代に、突き動かされるかのように命を削りながら駆け抜けていった私よりも10歳、20歳年上の方たちのことを、今でもよく思い出します。
残念ながら、阪神淡路大震災のときは、結局黒田さんにお会いすることはありませんでしたが、時が流れて東日本大震災の時に、ご縁をいただくことができました。

タッチケア支援センターが宮城県気仙沼に、尼崎のNPO団体でバスを借りて被災地に訪れるツアーに参加させていただいときのこと。偶然、行かせていただいた仮設住宅が、気仙沼の面瀬仮設住宅の集会場で、黒田裕子さんが震災直後、避難所の時からずっと支援されてきた地域です。仮設住宅となってからも、黒田さんをはじめ看護師さんやボランティアの方が常駐し、とても清潔で明るく、お年寄りも小さなお子さんも一緒に集える場として、大切に守られている空間でした。
阪神淡路時代の仮設住宅を知っている私としては、(もちろん個々人の皆さまには計り知れない大変な思いや現実をお持ちであったでしょうが)、面瀬の仮設住宅は、奇跡のように素晴らしく、そして温かな空間でした。黒田裕子さんをはじめ、大勢の方が心をこめてサポートされたのがよく伝わってまいりました。私達は、そこで足湯とハンドトリートメントと傾聴のボランティアをさせていただいたのですが、事前に広報していただいたお陰で大勢の住民の方に体験していただくことができました。その時の活動報告はこちらです。
http://touchcare.exblog.jp/18881674/

タッチケア支援センターがスタートしてまだ1年目。そして、この時のボランティアに参加した方のほとんどは、タッチケア基礎講座を修了してまだ間のない方がばかり。。。無謀といえば無謀だったのですが、やはり予想どおり^^。この時、黒田裕子さんから、稲妻のような非常に厳しいご指摘をいただいたのですが、思えば、黒田さんからあれほど真摯に伝えていただけたことは、私達にとって計り知れないほどのGIFTであったのでしょう。

あの瞬間、私達にとって黒田さんは「伝説の偉人」から、終生忘れ得ないかけがえのない方となられました。 その後、神戸で数回お会いできましたが、その時は本当にお優しくて、、、。おそらく、もう、時間がないから、しっかりと伝えていきたい、、、という思いでらしたのでしょう。
タッチケアのボランティアをしているときに陥りやすい、「良いことをしているという自己満足」、「気持ちがいいと言われてることの恍惚感」 そんな、施術者側、あるいはボランティア側だけが輝いてしまうような活動になってしまっては絶対にいけない。利用者さんが輝くことを第一義にする。このことは、現在のタッチケア基礎講座でしっかりと伝えていこうと心がけています。

そして利用者さんと日常的に共にいる常駐の支援者の方やその空間を尊重すること。また、当然ながら衛生面や安全性についてもしっかりと責任を持つことなども、タッチケア支援センター1年目に黒田裕子さんからいただいた、大切な教えです。



今回の「神戸フォーラム」では、黒田裕子さんが末期がんで亡くなる直前のご自身の映像をNHKが撮影したドキュメンタリーのダイジェスト版が流れていました。放映のときももちろん拝見し、今も録画しておりますが、その時の黒田さんが、「死ぬのは怖くはない、、、ただ、時間がない、、」とつぶやいておられたのが、今回も心を打ちます。

そして、黒田さんが最後の最後まで唱えておられた大切なメッセージを3つ。
伝えていただきました。

1、最後の一人まであきらめない。見捨てない。
2、現場に真実がある。実践の中に真実がある。
3、福祉避難所の充実。


黒田さんの足元にもおよびませんが、阪神淡路大震災の時の避難所や仮設住宅、テント村で体験したことを思い返すと、このお言葉が、どれほどに重要であり、そして、難しいことであるのかを実感します。

追悼式でのダイジェスト版ではありませんでしたが、NHKの番組では、末期ガンで西宮の病院で入院されている黒田さんが、兵庫県知事をベッドサイドにお招きして、テレビの中で、「福祉避難所の充実」を陳情されているお姿も胸をうちました。(そして、今年の熊本大地震。いまなお、福祉避難所のことが問題となっていますが・・・) 

黒田裕子さんの全身全霊を撃ち込まれた活動は、その後の被災地の支援の在り方を大きく変えていき、医療・看護・介護、ボランティア活動、、、さらには、行政や社会をも変えていったこと。
そして、そのスピリットが大勢のケアの現場の方達のハートを開き、受け継がれていっていること。。。

今回の神戸フォーラムは、ちょうど黒田裕子さんの三回忌。
神戸の空の上で、大きな大きな星となられて、そして、これからも、ケアの現場を見守り続けていかれるのでしょう。ほんとうに、なんて大きな星でらっしゃるのでしょうか。。。

ほんの一瞬だけですが、この地上でお会いできたことに感謝です。
星空の彼方でもお忙しくされておられるかもしれませんが、どうか、ゆっくりとお休みください。


(文責 中川玲子)
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大会長、長尾和宏先生が黒田裕子先生の思い出話を語ってくださりました。


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黒田裕子さん、追悼コーナー


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梁勝則先生と、大下大圓先生。そして、アロマセラピストの穴田美緒さんと、板谷奈鳳さん。
by touchcaresupport | 2016-09-27 12:57 | 代表雑感