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ご報告 Touch and Loss /喪失と悲嘆によりそうタッチセラピー


2017年3月7&8日、第三回目となるキャロリン・ターグ先生の来日ワークショップが兵庫県西宮市の北部、霊峰「甲山」を臨む滞在型の会館,六甲保養荘で開催されました。
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今回のタイトルは“Touch and Loss ~喪失と悲嘆にかかわるタッチセラピー”このテーマは、これまでキャロリン先生が私達を指導してくださったオンコロジータッチセラピー(癌患者さんへ)、ニューロタッチセラピー(脳卒中等の脳神経後遺障害の方へ)の延長にあるものでした。

医療的ケアが必要な患者さんにかかわる観点として、人生における“喪失(loss)”の理解を抜きに考えることはできなかったでしょう。まさに、3年間の、キャロリン先生のワークの集大成となる内容でした。

喪失(loss)の概念は、想像した以上に広く、それは悲嘆(Grief)、トラウマ、ショックを含めつつも、人生の中でほとんど全ての人が体験するテーマでもありました。それだけ、私達はクライアントさんの喪失と出会っていくケースが多いともいえます。喪失とは人生そのものであり、そして、喪失のプロセスの中に変容と成長が隠れていることもクラスを通じて体験的に理解が深まっていきました。

そして、喪失が私達の「アイデンティティ」や、「いかに、私は人から愛されているのか?」というテーマにも深くつながるという、深い洞察も得ることができました。なるほど、タッチというものは、人のアイデンティティや、自尊感情や自己愛にもかかわっていくものなので、人生の喪失と、タッチケアとのつながりは、決して浅いものではないと再確認した次第です。

これまでグリーフケアに関するケアの多くは、“語る”ことと“傾聴”に主眼が置かれてきましたが、タッチケアのような、身体への関わり”を通じてのワークの可能性も、このクラスではテーマとなり、感情や体感覚、ボディスキャン瞑想や絵を描くワークなどもとりあげらました。

「からだ”とは、喪失の体験を変容させるひとつの入り口ともなりうるものす」

という、キャロリン先生の導きの中、2日間、15名の参加者は、自分自身や他者の喪失の体験に寄り添いながら、感情やからだの感覚に意識を向けていく、凝縮した時間が流れていきました。
下記、クラスでのキャロリン先生の御言葉と、実際に行ったワークを中心に、私のノートをもとにして、少し長くなりますがご報告いたします。ブルーのところは、主にキャロリン先生の講義を記録ノートをもとに再現したものです。私自身の解釈も入り、クラスの内容のごく一部ではありますが、ご容赦ください。

         
      (文責  中川れい子(NPO法人タッチケア支援センター、代表)

1、儀式(Ritual)

「…一見、宗教的な体験にみえますが、宗教を超えたところでも、私達は日常的になんらかの儀式を行っています。一般的に、儀式とは、グループで、あるいは個人において、人生の段階が変化するときや人生の折り目に、そうであると認識しあうことあらわします。人生の変わり目への変容。。。しかし、私達は実際には、一瞬一瞬、変容し、そして、その一瞬一瞬が儀式であるともいえるのではないでしょうか。。。」

クラス全員が大きなサークル(輪)をつくって互いに向かい合い、それぞれ、準備のできた人から語りはじめました。自己紹介、そして、自分自身の喪失体験の話。その喪失にかかわる何かを(たとえば故人の写真や遺品、いつも身に着けている大切なもの等)を、祭壇に置いて、置き終わったら、今、自分の身体の中で、何を感じているのかを意識し、そこに手をあててみる。それを周囲の人も一緒に、同じところに手をあてて感じてみます。15名が次々に祭壇に置くことで、2日間のクラスを見守る“私達の祭壇”が生まれました。

2、語りと傾聴

全員が語り終えるまで、かなりの時間がかかりました。ここでは、「語ること」そして「傾聴」という大切なワークが行われていきました。

「喪失は、すべての人が体験するもので、一度だけではなく、何度も何度も繰り返し訪れます。その体験は、様々で、一人一人の方で異なります」

まずは、“相手の話を、主観的な判断を手放して、誠実に“聴く”ことから。。。これが、私達の最初のワークとなりました。

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3、悲嘆とは?(テキストより)

“悲嘆とは、喪失、災難、不幸などに起因する、強烈な感情的苦しみである。深い惜別、深い悲しみ。”(ウェブスター辞典) 悲嘆は、個人的に意義のある喪失に対する不随意の(いやおうなしの)反応だと、狭義に定義することもできる。その反応は精神的、感情的、肉体的、社会的、行動的、そして/またはスピリチュアルの、どんな組み合わせもあり得、いつでも現れ得る。(テキストより)


4、喪失の種類 (テキストより)

有形の喪失Concrete Losses : 所有物、金銭、仕事、家
進んでいく喪失Developmental Losses: 生殖能力、歩行能力、健康、聴力、視力などの能力
自己の喪失Loss of Self : 身体的病気、離婚、配偶者の死、キャリア、虐待(トラウマ)
抽象的な喪失Abstract Losses: 夢、信じる気持ち/信念、性的エネルギー、ユーモア、自立、自由、人生の質
他者の喪失Loss of others : 配偶者/パートナー、両親、友人、子供、兄弟姉妹、仕事仲間、場所、コミュニティー、流産/中絶、他者の転居を通して


5、悲嘆と喪失、トラウマ、ショック

喪失があれば、悲嘆があるかというと必ずしもそうではなく、悲嘆は喪失の結果、期待しようが、さけようが、いやおうなしに起こりうる不随の反応の1つです。トラウマは、喪失とも悲嘆とも異なります。悲嘆が必ず、トラウマを引き起こすとは限りませんが、トラウマは必ず悲嘆をおこします。トラウマは、予期せぬ、望まなかった喪失の結果もたらされます。トラウマには、多くの場合、悲嘆が含まれます。“何を喪失したのか?”は、重要ではなく、喪失の内容に優劣はありません(ex パートナー、親、子、ペット、仕事、、、等)。喪失を体験した人が、それにより、どういう体験をしたかということが重要なことです」

6、喪失とアイデンティティ

「喪失は、すべての人が体験します。喪失によってもたらされる悲嘆は、人によって様々で、回復に必要な期間も人によって様々で、問題の表出の仕方も様々です。

その中で、とくに深刻さが伴う喪失は、多くの場合、その人自身のアイデンティティを揺るがすような問題であることです。

すなわち、喪失によって、「自分がこうだと思っていたものが揺るがされる」ことで、たとえば、仕事を自分自身のアイデンティティだと思っている人にとって、仕事を失うことは、深刻な喪失であり、それによって悲嘆も伴うでしょう。この場合の喪失は、“自分像(こうだと思われている自分)”の喪失であり、自分をどのように外部に見せているのか?あるいは、「自分がどのように他者から愛されていたのか?」 の変化をあらわします。自分像を失うということは、外部からの愛を失うことに等しいともいえます。

ここで、喪失体験を通じて、その後、自分はどのようなアイデンティティを獲得したのか? 
どのように、人から愛されることを受け取ることができたのか?というプロセスが大切となるでしょう。

このように、喪失のテーマには、アイデンティティというコンセプトが鍵となります。すべての喪失が、アイデンティティの喪失と関係するという訳ではありませんが、多くの場合、喪失を通じて激しい苦しみの中にいる人の多くは、喪失を通じて、アイデンディティの揺らぎと直面する人が多いといえるでしょう。地位や仕事、人間関係などで、自分像を制限している、、、その制限を超えていけない苦しみ。制限するような自分自身のアイデンティティに、執着していること。。。など、その苦しみの背景には様々なことが挙げられます。

この執着を手放す方法を2つ、ご紹介しましょう。

 哲学的・宗教的・スピリチュアル的なアプローチ。 

これまでの小さなアイデンてぃティを超えていく自分。

② 人とつながる。あるいは、自然とつながる。

悲嘆に苦しんでいるときに、もっとも大切なことは、「つながり」だといえるでしょう。
その人を、治そうとするのではなく、つながること。ジャッジせず、ただ見守ることが、大切です。」



7、ワーク① ボディスキャン瞑想

床に横たわり、ガイドの誘導を聴きながら、自分のからだを丁寧にゆっくりと感じていきます。マインドフルネスストレス軽減法の1つのワークです。このワークは、前日の3月6日、キャロリン先生による実践エナジーワーク入門講座でも行われました。

8、ワーク② 意義のサークル(The circle of significant)のワーク

このワークは、『Technique of Grief Therapy 』で紹介されたJane Simingtonによる実践的なワークです。
このワークの基本姿勢は、「悲しみの中に、いつまでもとどまらず、その中にある変容の可能性をみていく」というものです。

ワーク: 紙に、大きな円を描いてみる。それを、大きなパイ(ケーキ)とみなして、パイを切るように、線をいれて、自分なりの喪失のマップを描く。クレヨンや色鉛筆などで色を使い、自由に描きます。そして、サークルの中の喪失を描いた大きなパイ(円)と対話し、その中の可能性を見つめ、感じてみたあと、ペアになって、互いに語り、そして、相手の言葉をただ傾聴します。頭の中の理解だけではなく、絵を描いたり、ハートから話すことが大切。みんな、内側の中に感情があります。それを、ただ、感じること。ただ、語ること。たとえば、絵を描いたり、、、、。それが許される時間は、とても大切。内側にある言葉を超えた、深層に埋め込んでいたものを感じてみる。かつて、失ったことは、今に、大きな意味を届けてくれるのかもしれません。そして、こうしたワークは、一生を通じて、続けていくことができます。

1日目のクラスの、ひだまりの夕刻時、、、会場のそれぞれの空間で、参加者の方達は、自分自身の”喪失のパイ”を描いていきました。
そして、ペアになって、語り合いました。


9、ワークその2 ハンドトリートメント

とても、やさしく、穏やかに、相手とつながり、腕を下からささえるように、骨(手首)のところから触れていきました。ストロークはせずに、ただ、触れていく、、、こんなに優しいハンドトリートメントは、初めて見ました。この空気感は、実際に観ていただかないとお伝えできないかと思いますが、まずは写真のみで。


上:丁寧にゆっくりとポジションと関係性を築いて、手首の骨の部分から触れていきます。支える手にも注目。オイルやローションは使いますが、ストロークは、あえてしません。
下:偶然、右腕を骨折された参加者の方がモデルになってくださいまいした。ギブスの上からも、やさしくホールドします。移動のときも、丁寧に、やさしく支えながら。

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10、 ワーク3 マッサージテーブルを使っての、タッチセラピー

これまでのことを振り返って、マッサージテーブルを使用しての、着衣のままでのタッチセラピーのワークをペアになって行いました。まず、喪失の体験を語り、傾聴し、そして、やさしく、おだやかに、ふれていきました。会場を、キャロリン先生がまわり、アドバイスしていきます。穏やかで、やさしく、静謐な、癒しの空間が育まれていきました。実際に体験してみて、、、やさしく、大切に触れられることの大きな効果を、参加者の方達は、身をもって再確認されました。


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11、グリーフケアについて、タッチセラピーの可能性

*生まれてすぐの赤ちゃんが、触れてもらうというコミュニケーションが得れない場合、死に至る場合すらあることが、わかっています。*タッチセラピーでは、言葉を表現する以前の状態に、かかわることができます。*肌の感覚受容器は5千個以上。タッチを通じて、エネルギーや情報を届けることができます。*タッチを通じて、私達の手は、受け手のからだに、愛と平和を伝えることができます。
*プロセスしきれない感情は、からだのどこかにとどまる。昔、マリオン・ローゼン(ローゼンメソッドの創始者)にこう質問した「身体から解放された感情のエネルギーは、その人の頭の中の意識が、そのエネルギーがそこにあると思っていても、抜けていくことがある」と。
*タッチを通じて、「あなたの体は、大丈夫。今、ここにある(presence)ことを伝えることができる。

時間がすべてを癒すのではなく、愛がすべてを癒すのです」(アンデル・ルーニー)

12、ケアのスぺクトラム

喪失や悲しみを体験しているクライアントや患者に対して、私達は、どのようにかかわることができるのか? キャロリン先生が考案した、ケアのスペクトラムを通じて、講義が行われました。同情でもない、燃え尽きてしまうような共感でもない。。。「慈悲」というフィールドで、クライアントとセラピストが「共に在る」空間を構築するための、エッセンスが、解説されました。

「セラピストの在り方として、自分自身をたもって、自分自身でいられること。クライアントの方が、自分自身で答えを見つけていけるようにサポートすること。悲嘆で悲しんでいる人に、自分の信念を伝えるのは、プロとして望ましい方法ではありません。クライアントに対して、今この瞬間でいることを支えて、あるがままを見ることをサポートします」



以上、長々となりましたが、キャロリン・ターグ先生の2017年3月7&8日の「Touch and Loss ~喪失と悲嘆によりそうタッチセラピー~」のクラスのご報告をさせていただきます。2日という短い時間では、受け取りきれない、膨大な内容でした。前日の、3時間のクラス、実践エナジーワークで、キャロリン先生が語られたように、すべての情報と体験は、エネルギーとして私達に届けられたのでしょう。

遠方からも大勢の方がご参加くださいました。
看護や、対人援助の現場に織られる方も大勢ご参加くださいました。
皆さん、真摯に、患者さん・クライアントさんに向き合うことを大切にされている方ばかりで、日本のケアの方向性に未来を感じさせてくれる2日間となりました。皆さんで、創り上げてくださった空気感が、今も懐かしく思い返されます。

そして、遠い、サンフランシスコの地から、私達に大切なエッセンスを伝えてくださったキャロリン先生。
深く、膨大な内容を、丁寧でわかりやすい日本語で通訳してくださった、広瀬由美子さん。
お手伝いくださった、すべての皆様

ただただ、感謝でいっぱいです。
これからも、じっくりと、受け取ったものを、私達の日々のタッチケアの活動に、浸透させていきたいと願います。
みなさん、ほんとうに、ありがとうございました。


代表中川れい子

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by touchcaresupport | 2017-04-01 14:02 | 日々の活動

朝日新聞のコラム<タッチケアの力> 2016.10.14

今年の9月に朝日新聞の夕刊のコラム『葦、夕べに考える』のコラムニスト、西見誠一記者から取材していただきました。胃カメラを受けたときに、看護師さんから背中をさすっていただいたら、劇的に不安や痛みが解消したということで、その理由を、、、ということでした。

ご自身のご体験的を通して、タッチについての素敵なコラムに書きあげてくださいました。
少しだけ、タッチケア支援センターの名前も出してくださいました。
西見さんと、記者さんの腰をやさしくさすってくださった、看護師さんに感謝です。
やさしいタッチが、これからも、広がりますように。

こちら、2016年10月14日の朝日新聞の夕刊のコラムです。
http://www.asahi.com/articles/ASJB64PP8JB6USPT00B.html


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by touchcaresupport | 2016-11-14 11:32 | 日々の活動

コーマワークからの学び / なぜ、タッチケア支援センターは、コーマワークを学ぶのか?

昨年に続いて2度目の開講となりました、佐野浩子先生(臨床心理士、日本プロセスワークセンター所長)のコーマワーク講習会。私達のタッチケアにぜひコーマワークからの学びを取り入れたいと願い、プロセスワークの創始者であるアーノルド&エイミー・ミンデル夫妻のワークショップで出会った、日本のコーマワークの第一人者である佐野さんをお招きしたのが昨年の夏。今回で、二度目の開講です。佐野先生のわかりやすい解説と、臨床経験、そして、体験的なワークをまじえての内容で、毎年、すごく深まったと大人気の講座です。そして、二度目の開講を経て、このコーマワークからの学びを、「こころにやさしいタッチケア」のエッセンスの1つとして融け込ませていただきたいとあらためて実感しました。

コーマワークは、コーマ(COMA;昏睡状態)の方の、ごく微細なフィードバックに対して丁寧な「気づき」を向ける手法で、通常はきわめて困難とされている昏睡状態の方とのコミュニケーションの回路が開けることがあるということです。これは、アーノルド&エイミー・ミンデル夫妻によって開発されたプロセスワークにもとづく臨床的なアプローチの1つで、「ものごとの自然な流れ(プロセス)」に取り組み(ワークし)、起こるべき変化が何かしらの理由で滞っていたら、「全体」にとってよりよい変化が起こるようにサポートする実践的アプローチに基づくものです。

今回のクラスは11名。タッチケアを学ぶ方、鍼灸師さん、僧侶、臨床心理士、スピリチュアルケアを学ぶ方、そしてコーマワークの土台となるプロセスワークを学ぶ方が集まり、アマナスペースは満杯状態。
今回のクラスでは、初日を「プロセスワーク入門」についてしっかり学びました。創始者のアーノルド・ミンデル博士はユング派の心理療法家で、現在プロセスワークは世界十数か国に研究所があり心理療法のみならず、様々な分野で展開されています。
ミンデル博士の言葉に、

 人間の中にあるやっかいな部分を、
 ただ追い払おうとするのではなく、
 それが表現され、ほんとうに開かれ、
 意識的にきちんと認められる時、
 もっとも大きな変化が起こるのです。

とあるように、プロセスワークでは、
「起こっていることは、すべて意味がある」
と、一見、間違っているように見えるのも、
その文脈を十分に理解していないのにすぎないのでは?
。。。という開かれた態度が大切になるとのことです。

この「すべてはプロセスである」という考えは、「こころにやさしいタッチケア」の基盤の1つでもあるエサレン®ボディワークにも、大きな影響を与えました。というのは、エサレン研究所の創立者の1人、ディック・プライスが80年代、突然の事故で亡くなったとき、ミンデル博士が招かれて長期ワークショップを行い(「後ろ向きに馬に乗る」)、失意と絶望にくれるエサレン研究所の人々の精神的にささえたということで、ミンデル博士はエサレンの中興の祖だという声もあります。


プロセスワークにおいて注目すべきことの1つは、身体症状と「夢」を扱うところ。
そもそも、ユング派の分析心理学は「夢」を重要視しますが、プロセスワークでは、夢に加えて、「身体症状や動き」にも注目します。
「夢は身体症状を反映し、身体症状は夢を反映する」、、、すなわち、身体に触れることは、その方の「ドリームボディ(夢の身体)」に触れていくことにつながるということ。

これは、昏睡状態のみならず、なんらかの意識障害や、認知症の方、あるいは、言語的コミュニケーションの難しい方、、、あるいは、リラックスをして「寝ているのか起きているのか、、微妙な意識の状態」の方へのタッチケア、いえ、すべての人の「からだ」に触れるワークにおいて、とても大切な概念ではないかと。。。。「からだ」を無意識の領域として語ることもありますが、実際には、完全な無意識ではなく、意識と無意識を行ったり来たりする、文字通り、ドリーミーな領域だといえるでしょう。

このことは、同時に、施術者側の意識もまた、こうした意識ー夢ー無意識といったゆるやかな領域に対して、100%でなくても自分自身が開かれている必要があるので、ある程度の理解が必要となります。
そうした領域をプロセスワークでは

 同意された現実 : 多くの人が「現実だ」と合意するレベル、社会的な役割など
 ドリームランド : 感情や身体感覚、夢など、主観的な体験で他者と共有しにくい。ロールなど。
 エッセンス : 形になる前のこんとんとしたエネルギー、源泉、本当の願い、最初の衝動

というふうに分類します。
施術の安全を守ったり、周囲との協調や倫理性を守るために「同意された現実」はもちろん大切です。が、同時に、どこか緩やかで、クライアントさんの身体の中の夢と共鳴するような、ドリーミーな意識状態をキープするのが大切。 こういう状態を両方保つのは、少し上級編かもしれませんが、グランディングとセンタリングと、そして、自分自身のセルフリラクセーション(こうした営みを、プロセスワークはさらに広い意味あいで「インナーワーク」とよぶようです)を大切にすることで生まれてきて、そして、相手の方のからだというドリームランドとの共鳴(チューニング)がよりスムーズに進むかなぁと思います。

さらに、そうしたインナーワークが深まることでエッセンスの領域へと深まり、そこで、タッチを通じて「私という存在と、あなたという存在が本当に出会うフィールド」で触れ合うことができるのではないかなぁと想像しています。そういう意味で、タッチケアやボディワークを学ぶ人には、プロセスワークが学ぶことをお勧めしたいと思います。

今回のクラスでは、初日を特に「コーマワークを通じてのプロセスワーク入門」としましたので、このプロセスワークそのものを学ばせていただける時間が十分にありました。

一次プロセス、二次プロセス、エッジ等の専門的な言葉は、最初は理解するのが難しいですが、慣れてくると、今起こっている状況をより広い視野で眺めることができ、目に見える事象に隠れているものへの理解が深まりました。「コーマワーク」に進む以前に、こうした考え方はとても大切だなぁと思います。

それは、すべてのことには意味があり、全体性を生きるよう、プロセスを完了するために進んでいるという観点をもつことで、コーマ(昏睡)や、麻痺、拘縮、あるいは、ガン等の身体症状、人間関係や家族関係の問題に広く、そして、深くかかわり、寄り添うことができるのでしょう。

さて、2日目はいよいよ「コーマワークの実際」
前回と同じように、実際に自分自身が横たわり、「コーマ」状態を体験します。身動きがとれず、言葉を発せず、他者とコミュニケーションをとれない状態で、他人が関わり、触れていくことが、どういうことであるのか、、、ということを、リアルに体験します。

セラピスト側は、呼吸、とくに吐く息とともに、相手に語ること。雰囲気、ムード、座る位置、コミュニケーションをとりながら、ゆっくりと、穏やかに触れていくことなどを体験します。
こうした、触れ方等の技術以前の、かかわりのアプローチを、プロセスワークでは「メタスキル」と呼びます。
タッチケア支援センターの講座でも、触れるテクニック以前の大切にしたいのですが、この「メタスキル」という概念をもっと深めると、理解しやすいかもしれません。

やはり、時々、「コーマ」状態を体験してみて、普段うっかり忘れてしまっていることは大切だなぁと思いました。

午後は、様々な触れ方の実践。
やはり、触れ合うことで、皆さん、楽しみが増しますね!

最後に、佐野先生の師匠で、現在海外のコーマワークの展開をミンデル博士から任されている、ゲイリー先生が、アメリカで交通事故にあい、コーマ状態であった青年への実際の「コーマワーク」での様子を伝えた貴重なビデオを見せてくださいました。

佐野先生自身も、現在急性期の病院で、臨床心理士として、コーマワークを患者さんたちに実践されているので、多くの臨床上での事例を伺うことができました。


こうしたコーマワークからの学びを、日本の緩和ケアや、医療環境下のタッチケア、あるいは、認知症の方へのケアに活かしていけるのだなlと今回も、実感しました。

私達も、日々の実践や、ボランティア活動に、どんどん生かしていきたいと思います。

佐野先生、今年もありがとうございました!
また、素晴らしいクリエイティブな空間を共に創り上げてくださった、参加者の皆さま、ありがとうございます!

来年も、ぜひ、コーマワークを開催したいと思います!


(佐野先生の、プロセスワーク入門講座が、関西で1月14、5日に開催されます)


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by touchcaresupport | 2016-09-19 14:10 | 日々の活動

日本語訳『終末期のクライアントに、その人が求めるがままに施術をしてはいけない7つの理由』

終末期のクライアントに、その人が「望むがまま」に施術をしてはいけない7つの理由
7-reasons-not-give-client-whatever-want-end-life
By Tracy Walton (トレイシー・ウォルトン)  訳:石井万里子

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この文章は、米国ホスピタル・ベイスド・マッサージセラピー、オンコロジーマッサージセラピーのパイオニアのお一人である、トレイシー・ウォルトン先生の2016年6月5日ブログ「7-reasons-not-give-client-whatever-want-end-life」を石井万里子さんが日本語訳したものです。原文は、下記のサイトをご覧ください。
http://www.tracywalton.com/7-reasons-not-give-client-whatever-want-end-life/
終末期の患者さんのみならず、医療環境下や、高齢者の方へのタッチセラピーなどで気を付けるべき大切な点が書かれていますので、ぜひご参考にしてください。 (NPO法人タッチケア支援センター)
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「先週のマッサージはいかがでしたか?」
そう尋ねた私に、ベッドに横たわった私のクライアントは答えました。
「よかったわ、ほんとに。でもね、正直に言うともっと強い圧の方がうれしかったの。今日はもう少し強めにしてもらえるかしら」

彼女はもうかなり進行した膵臓がん患者で、強い痛みにずっとさいなまれています。その苦痛からひととき解放されたいと、強いマッサージを希望されるのでした。

このようなやり取りはこれまでに幾度となく経験していますが、常にとても重要な瞬間です。私の果たすべき役割、同情心、倫理観が頭のなかでぶつかり合います。私は、深く呼吸をし、それから答えます。



「望みを叶えてあげなさい」と言う人がいるけれど

仮定してみてください。これはあなたのクライアントです。病は重く、彼女の余命はもう長くありません。いつも激しい痛みにさいなまれています。そしていまあなたに強い圧のマッサージを求めています。いえ、懇願しています。あなたはどうしますか?

こう訊くと、生徒の立場の人はどうするべきでしょうかとか尋ねます。先生の立場の人はこのようにしなさいとアドバイスします。現役のマッサージセラピストたちはフェイスブックで自分の意見を述べ合います。

このような議論になったとき、必ず出てくるのが、「もう先がない人には、望み通りにしてあげなさい。」というアドバイスです。その「望み」というのが、終末期にある重篤な患者さんに強いマッサージをするというようなことであろうともです。余命わずかなクライアントなのだから、望みのものを与えてあげればいい。通常の注意事項を杓子定規に当てはめることはない、というのです。

いいえ、違います。答えはNO。ただ、NOです。

このようなアドバイスをしたくなる気持ちはよくわかります。つらい状況にある人の痛み・苦しみを少しでも和らげてあげたいという使命感からくるものでしょう。それでも、「なんでも望むものを与えましょう」というのは間違った答えです。

この状況では、通常よりさらに厳しくガイドラインに沿う必要があります。決してガイドラインを気にしなくてよくなるのではありません。終末期にある人へのボディワークには、ことのほか注意深さと慎重さが重要となるのです。
私は、さまざまな倫理的・実践的な理由から、またプロとしての自覚という観点からも、このことを強く意識しています。その理由のいくつかをここでご説明しましょう。


1. 「お客様は神様です」は道徳的な責務ではない


マッサージセラピーの現場で「クライアント第一主義」はよい理念ではありますが、それはしばしば「お客様は神さまです」という古い慣用句と同義になりがちです。すなわち、お客様はお金を払い、好きなものを選ぶ。援助のプロとしての私たちの仕事はお客様が選んだものを提供すること。

重い病に冒されている、もしくは人生の最後が近づいているクライアントが痛みに苦しんでいたら、その人の望むことなら何でもしてあげたいと思うでしょう。その痛みの激しさを目の当たりにしたら、平常時の注意事項などかまっていられない。それにクライアント自身が、自分に必要なものが何かを一番よくわかっているはず。そう思うことでしょう。

しかし、私たちの仕事は相手が望むものを与えることではありません。クライアントの満足は、私たちのケアプランで目標とする多くの事項のひとつに過ぎないのです。それに、「自分の体のことは自分が一番わかってる」とよく言われますが、人間の振舞いにはそれと全く逆の例がたくさん見受けられます。

このような状況に置かれたとき、私たちがプロとして取るべき行動は、少し距離をとってよく考えてみること。このクライアントの判断はいつも正しいかどうかを思い出してみることです。私たちが強いリーダーシップを発揮し、より用心深くあらねばならないことを、この後に挙げる理由から確認していきましょう。
マッサージセッションの最終的な安全責任は、クライアントではなく、プロである私たちが負うのです。



2. 緩和ケアでは、副作用を考慮しなければならない

「なによりも、害をなすことなかれ」という教えは「すべての安全措置を放棄しなさい」ということではありません。
緩和ケアは痛み・不安・吐き気などの軽減を主眼としますが、それらの症状緩和のために何を・どのくらい処方するかは、それに伴う副作用とのバランスを慎重に見極めながら決めねばなりません。

マッサージをし過ぎることも副作用を伴います。マッサージセラピーを本当に緩和ケアの一部とするために、私たちは副作用を最小にとどめる適切な施術量を考えねばなりません。強すぎるマッサージが事態を良くするどころかかえって悪化させてしまうという場合をいくつか挙げてみましょう。

・痣(あざ)・痛み
強い圧は痣(あざ)を作る原因となり、痛みを増悪させます。痛みに対する不安が生じ、機能低下を招きます。
終末期になると肝機能低下で痣ができやすく、出血しやすくなります。

・血栓リスク
終末期にある方の本当に多くが、深部静脈血栓症の差し迫ったリスクを抱えています。血栓ができても、その半分くらいは症状が外に現れません。深部静脈血栓は下肢にできやすいのですが、その兆候を発見することは困難です。なんと怖いことでしょう。ですから、終末期のクライアントに関わるセラピストは、下肢に圧を加える時や下肢の関節を動かす時には十分に注意をしなければなりません。深部静脈には触れようとすることさえも避けるべきです。なぜかといえば、血管の中に浮遊している血栓は危険性が高く、場合によっては命に関わる事態を引き起こすからです。重い病気の人は体のあちこちに血栓を持っていますので、マサージセラピストはよく勉強し、クライアント一人ひとりのリスクを慎重に吟味しなければいけません。

・体液バランス
終末期には、腎臓、肝臓、心臓に不具合が起こると体液のバランスが不安定になります。むくみの原因は様々で、リンパ浮腫であったり、その予備軍である時もあります。むくんでいるところに触れ、むくみを取ってあげたいという気持ちにかられますが、不適切なマッサージを行ったり、あたためたりすることで状態を悪くしてしまう可能性があります。ほとんどの場合において、マッサージセラピストにできる最良のことは、その時の状態をそのままにしておくこと。体液を動かすような施術はしない方がよいのです。

・骨の強度
進行癌やその他の原因で、外見からはわからなくても、骨がもろくなってしまっていることがあります。中くらいの圧でマッサージしたり、強めに関節を動かしたりするだけで骨折してしまう可能性があるのです。


冒頭にお話ししたクライアントは、このような要素を複合的に持っていて、骨への転移と肝機能障害がありました。複数の要因が重なって、彼女の深部静脈血栓症リスクは高いものになっていました。

これらは、ぱっと見てすぐに気づくようなものではなく、注意深く調べないとわかりません。最初の問診、何ヶ月も彼女を担当してきた経験、それに加えて独自のフォローアップ調査などを通して私はそれらを見つけ出していきました。すべて、昔ながらのアプローチによって検討していったのです。

もっと強い圧でというリクエストに応じ、彼女の希望をそのまま聞き入れるという安易な選択をしていたら、私のマッサージは「やりすぎ」になり、のちの不快感や、もっと悪い結果をもたらしていたかもしれません。私たちが初対面で、関係の積み上げがなかったとしたら、リスクは更に大きくなったことでしょう。

終末期のクライアントへのマッサージのゴールは苦痛の緩和です。つまりマッサージセラピストは緩和ケアを施す要員として働いているのです。ヘルスケアプラクティショナー、ヘルスケアプラクティショナー兼マッサージセラピスト、それともまったく別のサービスを提供する人、あなたが自分のことをどうとらえていようと、「害をなすことなかれ」という大原則に従わなくてはなりません。



3.セラピストとクライアントだけの問題ではない


マッサージセッションは、その性質上当然ながらプライベートなものです。マッサージセッションの間に起こることはその場の中だけに留められ、表に出ることはありません。クライアントが終末期にある場合は、特にそうです。このことが、セラピストをクライアントの要求に従いたい、用心を少し疎かにしてもいいという誘惑に駆り立てます。結局のところ、誰も見てないんだから。そうでしょう?マッサージセラピストはクライアントだけに忠実であればいいんじゃないの?

実際には、マッサージセラピストとして私が説明責任を負うのはクライアントだけではありません。他にもたくさんの関係者がいます。クライアントが亡くなった後であっても、私はご遺族や医療チームの質問に答えなければなりません。もし通常のやり方から逸脱し、害を与えた、もしくは与えたと思われるようなことをしたとすれば、そのクライアントのケアに関わった人全員に説明をしなければなりません。

場合によっては、上司や雇用者、賃金を払ってくれるサードパーティにも説明する必要があります。マッサージセラピストの業界団体や許認可団体にも。損害賠償保険業者にも。私たちは互いに説明責任があるのです。そうです。クライアントとセラピストだけの間にとどまらず、説明責任の範囲は大きく広がっているのです。

マッサージセラピストが症状を和らげるために行った強めのワークが、おそらくデリケートな組織を傷めてしまった結果、後で余計に痛みが強くなったというようなことを想像してみてください。あるいは、間違った方向へのストロークがリンパ浮腫を引き起こしたり、悪化させたりしたということを。あるいは病弱なクライアントに中くらいの圧のマッサージを行った後、吐き気やウィルス性疾患のような苦痛が増したということを。それほど強くない圧であっても弱っている身体には刺激が強すぎるということがあります。

これらは、強い圧でのマッサージで起こり得る数えきれない話の中のほんの幾つかの例に過ぎません。(研究熱心なみなさん、副作用についての調査結果を提示しなくても私を信じてください。私をフォローし、私が直接見聞きした話を聞いてください。私がなぜ「害があるという証拠」より「害があるかもしれない兆し」をボディワークの指針として優先するのかわかっていただけると思います。)
施術のし過ぎによる副作用は、費用のかかる、誰も望まない、クライアント自身とその家族にとって精神的苦痛となる医療的介入の連鎖を招いてしまうかもしれません。終末期においてはその確率は特に高くなります。



4.直感が常にあなたを正しく導くとは限らない

強い圧でマッサージを行うことを、直感がクライアントを守るから大丈だと正当化するセラピストがいます。「直感に従っていれば、害を与えるようなことは決してありません」と言うのです。

意思決定における直感の役割について述べようとすると、長い議論になり、ブログの記事一本を丸々費やしてしまうでしょうから、今は単に、直感は誤ることがあるということを指摘するにとどめます。私たちの仕事で、どんな時も常に直感が正しく働くという人などいないのです。

私の直感は、寝不足だったり食事が足りていなかったり、ストレスが溜まっていたりするときには簡単に鈍ってしまいます。本能的直感で正しいと思ってしたことが的はずれな結果を招いてしまうことがあります。これは、私の場合ですが。マッサージセラピストたちは、自分の直感に従ってこうやった、ああやったという話をよくします。私はその場にいなかったし、実際うまく運んだのだとしても、彼女たちのやったことは一般常識からも、医療の慣例からも、マッサージセラピーの慣例からもかけ離れたことばかりです。

もしあなたのクライアントが強い圧を望み、あなたの直感がそれに同意したとしても、それよりもっと重要なことがあると気づいてほしいのです。直感それ自体はマッサージセラピーで非常に重視されているものですが、他の確かな技術とともに用いられるときに最大の効果を発揮するもので、ただひとつの羅針盤として用いられるべきものではありません。直感でうまくやっているように見えるドクターや看護師は、直感とともに長年の経験と多彩な技術を働かせています。必要な情報や良好なコミュニケーション、推論する能力といった要素がマッサージセラピストとしての臨床的スキルを高めてくれるのです。
直感をむやみに信奉したり、直感に頼りすぎてはいけません。微妙な領域で間違いを犯さないためには、きちんとした医療的意思決定プロセスに従うことが必要なのです。



5. マッサージセラピストが快適であることは、クライアントが快適であることと同じくらい重要

クライアントの激しい苦痛は見るに耐えないものです。言うまでもなく第一に考えなければなりません。クライアントを取り巻く人々にも苦しみの波紋が広がってゆき、そのような状況は私たちの心を強く揺さぶります。私たちはその苦痛に対処するため袖をまくりあげ、自分たちの身を削ってでもあらゆることをしようとします。どんなことでもやりたいと思い、たとえ強い圧を加えるということであっても、それを提供してあげようと考えます。それをしないことは、人としてありえないことに思えるのです。
しかし、慈悲の心を持つことと、境界を設けることは、両立させることができます。強い圧でのワークを断っても、クライアントをないがしろにすることにはなりません。

セラピストとして、私自身もそのクライアントを取り巻く輪の中の一員です。私には私の、尊重すべきニーズと責任があります。夜、しっかり睡眠をとるために、後悔で眠れなくなるようなミスはできるだけ少ないほうがいいですし、これから先何千回もマッサージセッションをしていくために、内側の葛藤や迷いでエネルギーを浪費してはいられないのです。仕事をしっかりと安全に果たすために、私の心は安らかでなくてはなりません。

実際、行動の周りに明確な基準の線を引くことで、私は心の準備を十分に整えて仕事に取り掛かることができます。そうすることで私の心に思いやりの気持ちがすみやかに溢れてきます。気がかりで重くなった手より、軽く優しい手の方が、その気持ちをずっとよく伝えられるでしょう。
優しさをもって働くということは私自身によい効果をもたらします。それを私のクライアントにも届けたいと思うのです。



6. ヒロイックな行いは気分がよいけれど、それにのめり込んではいけない

終末期のケアのような差し迫った状況では、様々な要因が作用します。死を思う時にいつも感じる痛みと怖れ、私たち自身の厄介なエゴ、人の死を見続けてきた歴史、助けることのできた経験と、助けられなかった経験。私たちは自分自身の痛みを誠実に受け止めてきました。でもそのことが私たちの決断を鈍らせもするのです。

自分の中に不安定な何かを発見した時、私たちはそれを急いでどうにかしようとします。クライアントの要望に従ってしまいたいという衝動は、私たち自身の不安定さへの反応なのかもしれません。他人の痛みや苦しみさえ耐えがたいのに、自分の苦しみであればなおさらのこと。私たちは急いでそれを手放そうとしてしまいます。

急いでしまう理由は他にもあるかもしれません。私は私自身を、問題解決ができる人間だと思いたい(だれかドアを開けて私のこのエゴを追い出して!)。この自己イメージを守るため、私は解決策と思うものに飛びつき、通常の用心をすっ飛ばして強い圧を望む人に強い圧を与えてしまうのです。急いで何かをしようとする時、往々にして妥協的な判断をしてしまいます。

でも、クライアントが求めているのは助けであり、ヒロイックな行為ではありません。私たちが修練しているのはマッサージセラピーで、救急医療ではありません。衝動的な思いは常に監視しましょう。ほとんどの場合、何をするのが正しいか考える時間はあります。

良質なマッサージは、そのアプローチに、考えるために立ち止まることを含んでいます。細胞組織は安定しているか、どんな要因が特定の部位でその安定性に寄与できるのか、あらゆる場合を考えます。機能低下している臓器はどれか、それが身体全体にどんな影響を及ぼしているかも考えます。

仕事をしていない、オフの時間は何をすればいいでしょう? 振り返りの時間を十分に取って、正しい判断の妨げになる心の痛みや恐れの感情を癒やします。終末期に関する本を読み、知識を深めます。ホスピスでのボランティアのトレーニングに参加します。死に関する対話会を組織したり、参加したりします。自分たちがこれからどこへ向かうのか、その途上で自分たち自身を癒すために何が必要かということに、人の助けを得て、よりリラックスして向き合えるようにします。



7. 緩和ケアの現場では、私たちもプロフェッショナルチームの一員

緩和ケアは、標準技法をきちんと身につけた、経験豊富なプロフェッショナルのチームによって提供されます。ヘルスケアサービスの提供者は、最新の注意を払って一回あたりの投与量を調節します。ケアは幾重にも階層が分かれており、あらゆる要因を考慮せねばなりません。

今は単独で行動する時代ではありません。マッサージセラピストも物事を自分の手の中にだけ収めておいたり、カウボーイスタイルで個人的な努力をしたりするのではなく、チームの一員として役割を果たすことを求められます。
チームワークを尊重しましょう。マッサージセラピーを、患者さんのケアに境目なく統合させていきましょう。

具体的にはどういうことでしょうか?それは、やさしい施術。たっぷりの施術より少し物足りないと思われる施術。可能なかぎり、フォローアップして観察すること。
そして、しっかり状態を照会すること。質問すること。もし適切でやさしいマッサージがあまり効かないようなら(効いているときでも)、このように言ってみましょう。「主治医さんをお呼びして、痛みのことを相談したほうがよいかもしれませんね。」「ホスピスの看護師さんが訪問されるのはいつですか?」「あなたの治療チームの皆さんに、もっと助けていただくようお願いしてはどうですか?」

チームの皆さんがあなたのことをチームの一員だと思っていなかったとしても、一員としてふるまいましょう。もしチームが存在しないとしたら、訊いてみましょう。「誰があなたを助けてくれているのですか?」「あなたもご家族ももっと楽になるように状況は改善できると思います。誰にご連絡すればいいでしょう?」



終末期での私たちの役割

一回の施術の量、強さ、副作用について吟味するとき、初心に帰って、「害をなすことなかれ」の原則を思い出すことで、「やりすぎ」の罠にはまることはなくなります。
直感のみに頼らず臨床的な手法を用いることで、私たちのワークは形式的にも知識の面でも十分なものとなります。
自分自身のニーズと、説明責任を負うすべての人のニーズの両方に敬意を払うことによって、私たちはクライアントを取り巻くケアの輪の一員となることができるのです。

マッサージセラピーは、ペインコントロール、介護、終末期ケアの世界で大きな注目を集めています。自分たちのスキルに思い上がらず、謙虚さという健全な態度でもって臨むなら、私たちマッサージセラピストはそれらの世界との架け橋を築き、多くの人を助けることができるでしょう。チームプレーの一員となることで、私たちはより高い効果をもたらすことができます。クライアントやケア提供者とうまくコミュニケーションが取れるようになれば、私たちがリーダーシップを発揮することもできるでしょう。

思いやりと思慮深さをもって取り組めば、終末期ケアにおいての私たちの役割は、大きな感謝を得られるものとなるはずです。



私がどのように「ノー」を言ったか

クライアントからもっと圧を強くしてほしいという望みを聞いた私は、彼女の横に座りました。呼吸を整え、まっすぐ彼女の目を見ました。そして、あなたの望みはよくわかるし、それを必要と思う気持ちもわかります。私もあなたの痛みを和らげるために、できるだけのことをやりたいと思っています、と言いました。

そして耳を傾けました。彼女に、症状をもっと詳しく説明し、不快感のある場所を教えてくれるようお願いしました。彼女の話すことを注意深く聞き、幾つかの質問もしました。そして「今回は、痛みのある場所にしっかり意識を向けるようにしましょう」と告げました。

そして、私ができる手法を検討してみて、経験上以下のような方法が効果があると思うと説明しました。身体を心地よく支えられるようにボルスター(補助枕)をの位置を工夫する。やさしい動きで筋肉の張りと凝りに働きかける。必要なタイミングで、「手が触れているところを意識して呼吸する」ことを指示する。ストロークは静かに、長く。細胞組織をホールドする手はシンプルで穏やかに。

クライアントは少し不満そうでしたが、それでも「わかったわ」とその施術プランを受け入れてくれました。私は施術を始めました。

1時間後、クライアントが眠ってしまっていると思い、私はそっと帰る支度をしました。忍び足で出て行く背中に、「ありがとう」と眠そうな声が聞こえました。少し楽になったようです。

クライアントの気分がよくなると、私もまた幸せになるのです。


                  Tracy Walton (トレイシー・ウォルトン)  訳:石井万里子
by touchcaresupport | 2016-09-04 16:00 | 日々の活動

2016年1月のローゼンメソッドWSのご報告

2016年、最初のブログの更新となりました。
今年の活動の始まりは、ジュディスOウィーバーphdのローゼンメソッド1日講座
昨年9月に続き二度目の1日体験講座です。

今回、1月11日の1日講座は、兵庫県西宮市の北部、甲山の裏側にあります「六甲保養荘」で。
駅からバスで20分ぐらいかかりますが、周囲が静かで落ち着ける空間です。
参加者は20名。エサレン®ボディワーカーや、アロマセラピスト、タッチケア講座の修了生の方、そして、看護師、理学療法士、ソマティクスの先生等、大勢の方にご参加いただけました。遠方ですのに、ご参加くださいました皆様には心から感謝申し上げます。

前回と同じく、1日はあっという間。やはり、時間が足らないようでしたが、それでも、参加者の皆さまはそれぞれのご体験の中で、大切なエッセンスを受け取ってくださったようです。

午前中は、自己紹介のあと、ジュディス先生のお話から。
somaticsとは、ギリシャ語のsoma(からだ)から生まれた造語で、この言葉を作ったアメリカの哲学者のトーマスハンナは「soma とは、内側から経験される身体」と定義づけました。英語のbodyは、魂や生命の入れ物で、車の車体を表す言葉でもあり、bodyworkとは、車の車体修理工場を表すように、それは、外側から修理しなおしてあげるというようなニュアンスがあるそうです。だから、ジュディス先生ご自身はbodyworkという言葉はぴったりこない気がするとのことでした。通常、ローゼンメソッドはボディワークの一種とされ、ローゼン・メソッド・ボディワークと表されますが、今回の講座から、ボディワークという言葉はあえてはずし、ローゼンメソッドとしてご案内することにしたのは、そうした背景からです。

通訳は、エサレン®ボディワーカーで、長年センサリーアウェネスも学ばれている黒田有子さん。広島から駆けつけてくださいました。

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次に、ペアになって触れるワーク。
互いにコミュニケーションすること。
安全なスペースや距離、関係性への気づき。
触れている感覚を感じること。

ただ、それを、経験してみる。
experience

「あなたのからだの重さが、相手に伝わっていく感覚はありますか?そしてそれはあなたのタッチにどのように影響していますか?」

「手をソフトにしてみると、相手をより一層感じることができます」

「わからない(not knowing )」ところに勇気をもってとどまってみましょう。。。

ジュディス先生の言葉が、届けられました。



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午後。ジュディス先生のデモセッションを見学。
ローゼンメソッドでは、背面から始めることがほとんどで、施術者と対話ができるように、クライアントさんには顔をマッサージテーブルで、横向けにしてもらうのが特徴です。
ふれるときは、地肌に、静かにふれていきます。

安全であること。
コミュニケーションをとること。
そして、触れていきながら、静かに、対話していきます。

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最後には、参加者の皆さまでの交換セッション。
触れ合うことの豊かさを、それぞれの皆様が、体験してくださいました。

最後のサークルでは、そのことを、互いに体験をわかちあいます。
そのひとつひとつの体験を通じて、「気づき」を深めていきます。
参加者の方の体験と、質問の中に、あらたな探求のテーマが繰り広げられました。
こうしたディスカッションによって、施術は深められていくのでしょう。

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<参加者の皆さまのご感想>
*自分の気づきのワークを体験できて、有意義でした。
*今ここに在ることを、あるがまま、相手を受け入れること、相手の内的世界に入っていくこと、そのために自己をセルフワークすることが重要であることが、実感できました。
*自分自身のケアにもなりました。環境が素晴らしかったです。
*シンプルな内容でも、体験やディスカッションが深くなると思いました。
*相手を感じることが、セッションを実際にやってみて、少しわかったところがあったのが良かったです。
*ジュディスのプレゼンスを感じれたこと、日本でたくさんの人と共有できることを、大変ありがたく思います。
*やはり、ジュディス先生の存在力が際立っていました。参加者の皆さまの雰囲気も億、良い場が形成されました。
*ローゼンメソッドの奥深さ、やはり、「今ここ」と「自分自身」に回帰、ですね!
*本に書かれているような感情解放まで行くのは、なかなかなんやなぁと実感しました。自分の右肩のある一点に触れたときに、涙が出てきました。ああこれか、、、と思いましたが、他者の身体に触れるワークでは、五里霧中で、動いていないところがゆるんだりするのがわかるで精一杯でした。いつもとまったく違う身体の触れ方を体験できてよかったです。
*実技をもっとやりたかったです。
*2度目の参加で、前回よりもローゼンの感覚を深めることができたように思います。自分とのつながり、相手とのつながり、関係性の広がり、深まりを感じました。午前中のワークのあと、視野が広がり、参加者の皆さんの一人一人の存在感がより強く感じられました。
*2-3日ぐらいの時間をとっていただけたら、さららに深い学びになると思いましたので是非お願します。
*自分が感じたことを、信頼して、進めていくワーク、とっても良かったです。以前のWSよりも腑におちた感を得られました。
*もう少し深いところが知りたいです。ローゼンの特徴は、感情と言葉とタッチと理解しています。それがどのように連関しているのか知りたいです。
*1日では物足りなく、もう少し長い時間を体験したかったです。

http://touchcare.exblog.jp/25089067/次回のジュディス先生のローゼンメソッド講座は、2016年10月29日(土)&30日(日)の2DAYS.
これまでよりも、ゆっくりと時間をとって、体験を深めていただけたらと思います。
広報は、タッチケア支援センターのサイトをご覧ください。

NPO法人タッチケア支援センター 代表 中川玲子
by touchcaresupport | 2016-01-17 14:29 | 日々の活動

『ともいき京都』での、オンコロジータッチセラピー施術会

京都の地下鉄丸太町からすぐの町屋『風信館』で、京都大学大学院、看護科学コース教授で、緩和ケア・がん看護専門の田村恵子先生が発起人となり、新しいスタイルのがん患者さんの集いの会、「ともいき京都」がこの夏からスタートしました。

『ともいき』の名前の由来は、
がんを体験した人が、同じ京都という町で共に息し、
意気を持ち、粋(庶民の生活から生まれた美意識)に生きる。
そして、いつかは共に逝く者であることを思いつつも、
周りのいのちと共に支え合って生きることができるように願って、
「ともいき京都」と名付けられたそうです。

詳しいコンセプトは、こちらのブログをご覧ください。
http://kansai.me/west3260/


こちらの会で、8月28日の金曜日から、月1回のペースで、オンコロジータッチ認定セラピストによる、がん患者さんへの、タッチケア(セラピー)の施術会もスタートしました。

京都町屋の風情ある空間で、
ケアの心あふれる、看護のプロの皆様のあたたかいサポートの中、
がん患者さんへの、癒しの時間をもたせていただきました。

オンコロジータッチセラピーの施術者は6名。受けてくださった方は11名。問診と施術とで、約30分。施術内容は、主に、ハンドトリートメントと、肩背中へのタッチケアです。

はじめての活動ですので、何もかも手探りでしたが、
短いなりにも、ゆったりとした、落ち着いた空間と、施術を築くことができればと思います。

まだまだ、改善点は、多くあると思いますが、
大きな一歩を歩めたように思います。

*   *   *



8月28日の、施術を受けられた皆様のご感想もいただけて、とても、勉強になりました。
「とても、気持ちがよかった」「からだがぽかぽかしてきた」「呼吸が広がった」等、いい感触のご感想もいただけました。がん患者さんたちが、求めておられる癒しの要素と、オンコロジータッチセラピーが目指すべきエッセンスがつながりあえたような感触を得れたことは、とても、大きな前進です。
これからも、一回一回、手探りで、糸を手繰り寄せるように、さらにいっそう、歩み寄れたらと思います。

次回は、9月11日、午後2時半から4時です。
お近くの方は、ぜひお立ち寄りください。
(その後は、10月9日、11月27日です)


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by touchcaresupport | 2015-09-01 00:19 | 日々の活動

技法・様式をこえて ~オンコロジータッチセラピーって何?~

「オンコロジータッチセラピー(がん患者様のためのタッチセラピー)って、結局、どんな手技なんですか?」

って、よく質問されるのですが、なかなか、一言では、説明しきれません。
デモセッションを観ていただくのが、一番なのですが、それも、それぞれのケース(患者様のニーズ)にあわせてなので、一概には言えないのです。

強いていえば、
とても、ゆっくりで、ソフトで、gentleなタッチ です、、、という説明でしょうか。。
時には、エネルギーレベルにタッチするような場合もあります。
着衣のままからの、1グラムタッチ。
あるいは、ローションを塗布して、ゆっくりとやさしいストロークを、背中や手・足におこないます。

あおむけ、うつぶせ、あるいは、横向き。
様々なポジショニングが、患者様の状態にあわせて、選ばれます。
クッション等で、からだをサポートすることも大切です。

アメリカでは、これは、州認定マッサージセラピストの上級者の行う施術ですが、
観た感じでは、マッサージというよりも、”ヒーリング・ワーク”に近いといえるでしょう。
重篤な状態の方には、エネルギーレベルで、ただ、手を当てるだけ、、、というワークが、力を発揮します。
(それだけでも、十分に、パワフルなワークです)

でも、これもまた、一例でしかありません。
重要なことは、患者様の状況にあわせて、どのような圧で、どのようなポジションで、場所を、どれぐらいの時間で、施術すれば安全で、かつ、効果的であるかを、セラピストが見極めることが、大切なのです。また、医療チームとして連携していくことなど。
そのことを学ぶのが、オンコロジータッチセラピーであるといえるでしょう。
なので、リスクがあまりないときは、もう少し、圧が加わることもありますが、しかし、医療環境下では、どのようなリスクが隠れているかわかりません(深部静脈血栓や、本人も気が付かない骨への転移等)
情報収集、注意力、そして、気づきの大切さは、言うまでもなく、そして、一層に、グランディング&センタリング、ヒーリング空間をホールドすること、そして、マインドフルネス(今・ここ)な気づきが大切だといえるでしょう。(これは、本当に、施術力として大いなる力を発揮します。キャロリン先生も、そのことの大切さを強調されていました)

これから、こうしたことを日本国内で、連続的に学習しあう会を続けていけたらと思います。

オンコロジータッチセラピーの副教材で、キャロリンターグ先生の師匠である、Gary Macdonald 先生の大著「Medicine Hands - massage therapy for people with cancer 」の第七章のタイトル、

First Do Not Harm ~
何よりも、まず、害をなすことなかれ

(訳:kazuko Devirgilio)

の言葉にあるように、「安全・安心・リスクの管理」が、オンコロジータッチセラピストの、第一に留意すべきことなのです。

(Medicine Hands については、前回のブログをお読みください)

2015年1月の日本で最初の、オンコロジータッチセラピー講座にご参加の方のご感想で、次のようなお言葉ありました。

「害をあたえないケア」という言葉のイメージが、

「制約の多い消極的なケア」から

「害を与えることなく、患者さんをサポートできるより広い可能性を持つケア」

へと、ポジティブに変化していきました。


そうなのです。
最初は、制約だらけで、マッサージセラピストが大好きな、「自由」な感覚が、損なわれる感じがして、息苦しい気持ちになってくるのですが、3日間、しっかり学んだあと、、逆に、そのリスク管理をしっかりやれば、触れることに躊躇するような、でも、本当に、サポートが必要な方達に、安全で、そして、豊かなセラピーを提供することができるのです。制限の中でも、私たちが、やれることは、たくさんあるのです!

前回ご参加だった看護師さんで、すでに、医療現場でのタッチセラピーを行ってきた方は、それまでは、何もガイダンスがなく、リスク管理もそれほどなく、振り返れば、結構、あらっぽいこともやってきたように思います。。。というお言葉もありました。そう、いまだ、ガイドラインがなく、手探りな状態だったようです。

同じく、Medicine Hands の第五章「力加減・サイト(施術箇所)、体制、フレームワークへの振り分け方」に、このように著されています。

がん患者へのタッチセラピーは、2つとして同じものになることは、ありません。

スウェーディッシュ・マッサージでのセッション、リフレクソロジーの訓練を受けた人のセッションなど、それぞれの様式でのタッチセラピーを行うことができるでしょう。

しかし、ここでタッチセラピストが使うテクニック・力加減・ポジションの調節は、クライアントの要望を満たすものでなければなりません。

・・・・Medicine Hands は、どの様式のボディワークを推奨するわけではなく、むしろ、多くの様式のものが、がんと共にいきる人々に適切であると考えています。



なので、様々な施術のバックボーンを持つ方に、ご参加いただいて、「がん」という病気の背後に広がる、病歴だけではなく、その治療法、副作用、患者さんの生活、心理等を、総合的に学ぶ、「オンコロジー(癌・腫瘍学)」という地平で、学びあえたらと思います。

このコースは、米国州認定のマッサージセラピストの上級講座ですが、日本では、アロマセラピーマッサージ、リンパトレナージュ、エサレンボディワーク、スウェーディッシュマッサージ、ロミロミ等の、オイルトリートメントや、レイキ、ポラリティ、セラピューティックタッチ、ヒーリングタッチ、オステオパシー、クオンタムタッチ、クラニオ、ローゼンメソッド等の手をあてる療法の方にも、ぜひご参加いただけたらと思います。もちろん、看護師、理学療法士、作業療法士、そして、医師の方にも、ご参加いただけたらと思います。

治療だけではなく、Healing の力を、患者様に届け、患者様のもつ、自分自身を癒す本来の力、免疫力が高まることを、サポートします。ホリスティック医療、統合医療の目指す、大切な観点のひとつなのでしょう。

10月31日~11月3日、第二回オンコロジータッチセラピー講座 レベル1
こちらをごらんください。
http://touchcaresupport.com/hbm/

2015年1月、キャロリン・ターグ先生の、ホスピタルベイスドマッサージの報告会の様子です。
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by touchcaresupport | 2015-08-25 12:14 | 日々の活動

サンフランシスコの『ラグナホンダ病院』を見学しました!

2015年6月、エサレンボディワーク認定コースの仕上げのパート3の引率で、カリフォルニア州エサレン研究所へ。。そして、その帰りに、サンフランシスコに立ち寄り、ホスピタルベイスドマッサージの指導講師である、キャロリン・ターグ先生の勤める、ラグナホンダ病院 Laguna Honda Hospital & Rehabilitation center に訪問し、ここで展開されている、マッサージセラピーの現場を見学させていただきました。(病院内での見学ですので、写真での記録は控えさせていただきましたので、今回は、見聞きしたことを中心にお伝えしたいと思います。報告:NPO法人タッチケア支援センター 代表 中川玲子)

ラグナホンダ病院とはカリフォルニア州、サンフランシスコの中心、ツインピークスという小高い山のふもとにある、とても古い病院で、700床近くある、市が運営する大きな病院です。

2012年に、カリフォルニア州ノンフィクション大賞を受賞した『神様のホテルー奇跡の病院で過ごした20年間」の著書、ビクトリア・スウィート医師の描いたこの奇跡の病院とは、このラグナホンダ病院のことです。
(ビクトリア医師は、中世ドイツの修道女、ヒルデガルトの研究と、このラグナホンダで展開されている医療とを重ね合わせながら、このノンフィクションを著しています。西洋医療の客観的な見方に頼りすぎず、まさに「人を看る」ことを実践する医師たちの心あたたまる記録です)

その本の扉のところで、ラグナホンダ病院は、このように記されています。

「1867年、ゴールドラッシュに沸くカリフォルニア州サンフランシスコに開院。当時メキシコ領だったオールド・サンミゲル地区にある木造建築物を、開拓者や炭鉱夫のためのケア施設に転用したのがはじまり。背後にそびえるツイン・ピークスから湧き出る天然温泉がラグナ・ホンダと呼ばれているため、この名前が付けられました。この施設は「救貧院」とよばれ、さまざまな理由により社会生活が困難となった人々や、行くあてのない慢性疾患をもった人々、回復の兆しがない病人のためのシェルター(避難所)として機能した。こうした救貧院はアメリカのすべての州にあったが、過去40年間のあいだにほとんどが閉鎖され、ラグナ・ホンダは、アメリカの「最後の救貧院」といわれる。(『神様のホテルー奇跡の病院で過ごした20年間」より)

とてもとても、古い病院ですので、ほとんどは老朽化してしまい、周囲には、スペイン風のかつて病院として使われていた古い建物が並びますが、現在は、使用されていないそうです。

老朽化によって存続が危ぶまれたラグナホンダ病院でしたが、サンフランシスコ市民の住民投票によって、存続が決定し、税金や市民による寄付によって、5年前、近代設備のととのう、新しい病棟が建ちました。私達が、今回見学させていただいたのは、こちらの、近代的な病棟のほうです。

ここは、リハビリセンターでもありますので、患者さんの8割近くが、車椅子です。
病院にいると、本当に、この世には、いろんな車椅子があるんだなぁと、近代的でファッショナブルな車椅子を上手にあやつって、病院内を行き来する患者さんたちの姿をよく見かけました。

キャロリン先生が働く部署は、この病院の「ペインクリニック」です。
ホスピタルベイスドマッサージには、様々な効果がありますが、ここではとくに「痛みの緩和」のために、取り組んでいます。
マッサージセラピー、鍼灸、気功、音楽療法など、様々な代替医療で、少しでも鎮痛剤の量を減らす試みが、医療チームで行われています。キャロリン先生の教え子でもあるセラピストの方が患者さんになさる施術を、少し離れたところで見学させてもらいました。このときの施術は、ソフトで穏やかな、エネジェリックなタッチ。そして、音叉を響かせた波動の音楽療法も、同時に行われていました。この組み合わせはとてもよく、頻繁に行われるそうです。患者さんは、かなり重篤に見えましたが、約20分間、穏やかな時間と空間の中で安らいでおられるようでした。

グレース医師(Dr. Grace Dammann)という車椅子の女性の医師が、このペインクリニックのリーダーです。この方は、80年代のエイズ患者への献身的なケアでダライラマ賞を受けましたが、数年前に大きな交通事故にあいました。が、奇跡的な回復力で、今は車いすの医師として活躍されています。
(グレース医師のドキュメンタリー映画『States of Grace』が完成しました。こちらです。
http://openstudioproductions.com/states-of-grace/

彼女を中心に、1日に数回、ミーティングがおこなわれます。ミーティングの始まりは、5分間の瞑想から。その後、患者さんのリストを見ながら、それぞれの方の状態をシェアし、どのような施術をうけて、どのような効果や状態の変化があったのか、いま、どういう感じなのかを、分かち合います。何がどのように効果があるのかも大切ですが、それ以上に、様々な方法に対してオープンになり、いろんな角度から複合的に患者さんの状態が少しでもよくなるように、チーム医療を展開していくのが、ラグナホンダ病院に根付いたスタイルのように見えました。

ペインクリニック以外にも、ラグナホンダ病院全体を見学させてもらいました。アートセンターでは、車いすに乗った後遺障害の患者さんがOPさんと一緒に絵を描いていました。どの絵も、とても本格的で、個性的なものでした。ファームでは、野菜や草花と一緒に、ヤギや豚やアヒル、そして、ウサギたちがいました。車いすに乗った患者さんたちが訪れて、動物たちと触れ合います。最近生まれたばかりのウサギの子どもたちが、一番の人気者でした。リハビリルームには、2つの温水プールがあり、ワッツのような体験もできるそうです。カフェテリアは、自分で好きなものを選ぶビュッフェスタイルでお皿の重さをはかります。

病院内は、キャロリン先生と、看護師長のアンさんが、案内してくれました。ここでは、誰も白衣を来ていません。自由にオープンなスタイルで、患者さんと接します。アンさんは、とても笑顔がステキで、やさしく、フレンドリーな方でした。何度か、ナーシングの講義で、来日されたことがあるそうです。彼女が、私たちに、韓国人の女性で、日本語の上手なおばぁさんがいるから、彼女に日本語で話かけてほしいと頼まれました。私たちの顔を見ると、おばぁさんは、大きな声で「元気ですか!」と、笑顔で話しかけてくれました。

グレース医師と、少しだけ、ローゼンメソッドの話になりました。彼女は、生前のマリオンローゼンをご存じらしく、私がお会いしたことがあることを伝えたら、マリオンは、真実のヒーラーだったとつぶやいておられました。私には、そうつぶやくグレース医師自身も、真実のヒーラーに見えました。

今年11月に来日されるキャロリン先生が、開講される2つの講座は、今年1月同様「オンコロジータッチセラピー講座~がんを生きる人々へのタッチセラピー~」と、もうひとつ、「ニューロ・タッチセラピー~脳卒中や事故等の後遺症状と共に生きる方達のタッチセラピー~」。このニューロタッチセラピーについては、キャロリン先生が、グレース医師とともに、開発してきたもので、サンフランシスコでのクラスでは、お二人で指導されます。今回、経済的な理由で、私達は、グレース医師をお招きすることができなかったのですが、キャロリン先生を通じて、そのエッセンスを伝えてくださればと思います。やはり、当事者の視点から構築されたマッサージセラピーということで、とても、特別なものを感じるのです。

キャロリン先生の、京都で開催する2015年秋の来日講座のお知らせは、こちらをご覧ください。
http://touchcaresupport.com/hbm/


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近代的な新しい病棟。

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かつてのスパニッシュスタイルの病棟、老朽化したため現在は使用されていません。

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農園や、動物たちとふれあうコーナーがありました。
ちょうど、生まれたばかりの子ウサギが、、、。大人気でした。

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キャロリン先生と、一緒に同行した通訳の由美子さんと、ツーショット。
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by touchcaresupport | 2015-07-14 10:26 | 日々の活動

2015年最初の「こころにやさしいタッチケア基礎講座」受講生の感想文

2015年2月から3月にかけて開催しました、今年最初の「こころにやさしいタッチケア基礎講座」
今回の参加者の方は、介護士さん、看護師さん、養護教育の先生、カウンセラー、セラピスト、エスティシシャンの方など、ほとんどの方が、対人援助にかかわる方ばかりでした。そのせいか、全体に落ち着いた雰囲気のクラスで、それぞれの皆様の視点で、やさしいタッチへの取り組みがおこなわれました。
以下、皆様のご参加です。ご参加本当にありがとうございました。

感想 パート1-基本のタッチとハンドトリートメント

「心に優しいタッチは確実に人の心に届き、手をほぐすだけではなく感謝の気持ちが生まれ、自分も誰かの役に立ちたいという前向きな姿勢に自然となる気がします。」
「今までの自分は”してあげてる”感じだったと思う。どんなに気持ちいいと言われても自分の心が満たされたことはなかった。ということは相手も同じだったのではないか、と気づけた。2日間学んで幸せな気持ちになれた。」
「この2日間は心の飢えている部分に気づいたからなのか、ウルウルして良い意味で情緒不安定だったと思う。」
「○○しなければ、と頭で考えながらマッサージしていましたが、ある瞬間から肌に吸いつくようなストロークができるようになり、頭で考えずとも自然に呼吸も整いました。タッチケアは実は自分の内側を知ること、自分の”今”を確認することだと思いました。」


感想 パート2-着衣の上からのタッチケア、タッチとこころのつながりー

「今回の講座では相手をそのままありのままに受け止めることを学べて、自分の中で変わりたいと思っていたことへのヒントを得られたように思います」
「ふれるだけのタッチに関しては本当にびっくりしました。思っていたより力を入れずにただふれるだけの簡単なことで、ただ、それだけでも難しいと思いながらも、その効果の凄さに本当に驚きました」
「”今・ここ”がないと、呼吸や手が早くなったり、弱くなったり、流したりと、体験を通してわかりました。・・・”今・ここ”を感じることは、内面に大きく作用することに驚いています」
「手の平をあてているだけなのに、こんなにリラックスできるのは、今までの講義の中で学んだ呼吸や重力、相手の存在に感謝し、尊敬をもってふれるという基礎があってこそだと思います」
「着衣のタッチでも十分に気持ちのいい効果があることがわかりました。相手の方へのタッチで、施術している私の今の心の状態などに気づかされることに驚きました」
「最後のマッサージテーブルでのソフトタッチでは、眠っていないのに起きていない、不思議な感覚でした。手の力はすごいと思いました。タッチがなければ、あのような感覚にはならないでしょう」
「実習では、ただ触れているだけなのに、こんなにも安心感がまし、パートナーの方を感じ取れたとき、肩の力がすっと抜け、相手を思う気持ちが強くなりました」
「傾聴のワークでは、話をする、開いてもらうことの安心感とスッキリ感を実感することができました。解決できなくても、心にあることを吐き出す効果をあらためて思いました」
「最後のマッサージテーブルを使ってのタッチケアには、言葉がない。。。相手に対する安心感もはじめからあったが、室内の空気感、音楽、香り、そして、関節のあたたかさが、このうえなく癒され、とてもうれしかったです」


パート3 ボランティア実習と、フットトリートメント 他

「これまで介護の仕事を通して学んだことと、疑問に思っていたこと、また、私の人生の課題においても、タッチケアで教えていただいことはエッセンスであると信じます。こんなにも親身に熱心に教えていただいて感動しています」
「昨日の実習と今日の実習で、身体がどれほど繊細なものか、目に見えないところで働き続けていてくれるものなのか、ということも初めて認識できたような気がします」
「2月初回と同じ、歩くワークでは、足裏の感覚が繊細になっているのには自分でも驚かされました」
「環境だったり、自分の性格だったり、人に対する想いだったり、色々と、変わりたいという気持ちがずっとありました。まず、自分のことが好きになれたように思います。ただ触れるだけで、安心と癒しを与えることができるタッチ。やさしくふれると世界は変わる!!自分自身の心と体で体験できました」
「6日間、たくさんの学び、また、新しい気づきを頂きました。(日常的に施術)技術を行っているとはいえ、目からうろこのことばかりで、全体を見ながら、”今・ここ”の精神をほんのわずかではありますが、理解できたと思います」

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by touchcaresupport | 2015-03-15 22:04 | 日々の活動

米国ホスピタルベースドマッサージ報告会、無事終了しました。

1月26日、兵庫県芦屋市の芦屋市民センターでキャロリン・ターグ先生による米国のホスピタル・ベースド・マッサージ(HBM 病院でのマッサージセラピー)の報告会を開催しました。お忙しい中、50人近い皆様のご参加いただき、本当にありがとうございました。

講座は約2時間弱、1時間程のキャロリン先生のお話と、参加者の方からの質疑応答で盛り上がりました。キャロリン先生はマッサージセラピストとその指導者であると同時に、補完代替医療&統合医療の指導者でもあり、医療史も担当されているということで、ここでは、パワーポイントをつかっての講義が中心となりました。また通訳には甲南女子大学看護リハビリーテーション学部理学療法学科助教の松谷綾子先生がご担当くださいました。

講座の内容は、まずは、ホスピタルベースドマッサージの起源から始まります。
1960年代以前は、看護士さんは「背中をさする」技法を看護技術として教えられていたが、その後、医療技術の高度化に伴い無くなっていったこと。1989年にサンフランシスコのPlanetreeという団体でマッサージセラピーがスタートしてから、今では全米で200か所以上の病院がマッサージセラピーを取り入れられているということです。

米国では利用者の側からマッサージや鍼灸、音楽療法、アロマセラピー、心理カウンセリング、バイオフィードバック等の代替補完医療が患者さんの要望に応える形で広がっていったという経緯や、マッサージセラピーによる不安・鬱症状、痛みの軽減、不眠症の改善等に結果が出ているというリサーチのことなどのお話がありました。また、今後の課題として、持続可能な形での運営資金、熟練したマッサージセラピストの育成、病院スタッフとの連携、リスクマネージメント等があるということも、とても具体的でした。
キャロリン先生の所属する 代替補完医療学術コンソーシアム http://www.accahc.org/


また、キャロリン先生が関わる、サンフランシスコのラグナホンダ病院(『神様のホテルー奇跡の病院で過ごした20年間』の舞台となった650床の公立病院。患者と時間をかけて向き合うスローメディスンで有名)では、マッサージセラピーをはじめとする代替補完医療で、鎮痛剤の使用を減らしたペインコントロールを実践している等のお話もありました。また、がんだとわかった時点から「緩和ケア」をという、最近ようやく日本でも聞こえつつある観点にも、ふれてくださいました。
「神様のホテル」 はこういう本です⇒http://blog.goo.ne.jp/yutaka1947/e/40dbd2ae4a60d960628e82054446a689

キャロリン先生をご紹介くださった、13年間、サンフランシスコで看護士と看護学教諭として働いておられた久木元由紀子先生が、実際に米国の病院でマッサージセラピーを実践し、患者さんが「こんなふうにふれてほしかったのです」と、目に涙をためられたという実体験のお話も、大勢の方の胸に届きました。

最後の質疑応答では、日本の病院スタッフに理解してもらうにはどうすればいいのか? 今後の研究について等。研究結果が出ないかぎり保険対象にならないので、日本で広げるのは難しいのでは? 今後のリサーチの方法は?等のご意見もあり、これからさらに議論を深めていくことが大切になるかと思います。
また、今回ご参加くださいました京都大学大学院医学研究科教授の田村恵子先生(緩和ケア)や、関西大学人間健康学部准教授の村川治彦先生(身体学)、NPO法人アロマセラピストフォーラム副理事の宮里文子さんからもコメントをいただき、大変盛り上がりました。

今回、初のキャロリン先生の来日と、米国ホスピタルベースドマッサージの紹介を通じて、マッサージセラピー、看護士、理学療法士、鍼灸師、アロマセラピスト、ソマティクス等、他分野のフィールドにまたがって、関わっていただけたことがとても嬉しく思います。
大変短い時間で、ご参加の皆さまには少々物足りないものがあったかもしれませんが、次回のキャロリン先生の再来日を願いつつ、これを契機にさらにこのテーマを深めていきたいと思います。

なお、今回、キャロリン先生をご紹介くださいました、久木元由紀子先生(国際看護学教諭)と、NPO法人タッチケア支援センターが母体となり、ホスピタルベースドタッチケア研究会(仮称)を発足し、今後、継続的なHBMの研究と実践・研修を展開することとなりました。これからも、交流を深めながら、皆様と連携をとっていけたらと思います。

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by touchcaresupport | 2015-02-18 01:03 | 日々の活動